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コラム
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(掲載日 2008.11.11)

■世界の金融危機は回避へ

 米国サブプライム・ローン問題から派生した欧米の金融システム危機(注1)は、各国の政府から対応策が打ち出され、解決に向けて動き始めた。

 米国政府の対応が遅れたため、解決にはまだまだ長い時間がかかるものの、各国政府が問題解決を可能にする政策を実施し始めたことから、金融システム危機は回避されたと考えて良いだろう。

■市場は失敗した

 今回の問題は、米国住宅価格バブルの崩壊と、そこから派生した世界的な金融システム危機という、いわば「市場の失敗(注2)」であり、それが様々な市場に波及している。

 例えば、住宅ローンをベースにした「証券化商品」市場では、今回の問題が顕在化してからは、ほとんど値段がついていない状況だ。

 また、各国の株式市場も、株価全体が前日比で10%も変動することがあり、数%程度の変動率は日常的になっているなど、市場で取引されている価格は極めて不安定で、フェアだとはいえない。

 つまり、「フェアバリューを反映する」という、市場の「価格形成機能」が極めて弱くなっているのである。

■株式市場にも政府の介入が必要

 このように、市場が失敗したときは非常時であり、市場が自力で回復することは期待出来ないので、政府が早期に的確に対応する必要がある。

 金融システム危機の引き鉄になる金融機関間の資金取引市場には、既に各国政府が信用を保証するなどの対策を講じているが、大幅に下落している上に連日変動が激しい株式市場にも、政府による介入が必要だ。

 価格形成機能不全に陥り、暴落している株式市場を放置しておくと、資産価値が目減りし、消費や投資を萎縮させる「逆資産効果」が、経済に多大な悪影響を及ぼすからである。

■介入の具体策

 そのためには、政府が市場対策や景気対策を行う必要がある。市場対策としては、株価を過度に下落させる恐れがある「空売り」の規制(各国で先月から実施済み)や、政府による市場からの株式買い入れが有効である。

 景気対策は、民間需要の落ち込みを政府支出で補うのが目的なので、出来るだけ大掛かりで、実際に政府が支出する金額である、いわゆる「真水」の多い対策でなければならない。

■大規模な景気対策を

 日本では、今回のように株価が高値から半値以下になった1992年夏には、総事業費で10.7兆円、真水では7.8兆円の景気対策を行った。

 また、金融システム危機だった1998年には、4月と11月に合計で総事業費が40.5兆円、真水でも28兆円の景気対策が実施された。

 今回の問題は、火元が日本ではないとはいえ、日本の株価や実体経済への影響は極めて大きく、危機的な状況にあるといえよう。

 現に、日経平均株価の10月安値までの下落率は、昨年の高値から▲60%を超えており、欧米の▲40%程度よりもかなり大きくなっている。

 現在日本政府が予定している真水が数兆円の対策では、とても足りないのではないか。

(注1) 金融機関自身の資金繰りに懸念が生じて、金融機関の倒産がおきかねない事態。状況が進むと、信用が極度に収縮し、金融恐慌になる。
(注2) 市場が実体の価値を正しく反映できなくなる事態。市場参加者の過度の楽観や悲観から、引き起こされる。

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