先見創意の会 (株)日本医療総合研究所 経営相談
MENU
 
コラム
今週のテーマ
(掲載日 2008.11.18)

  新聞報道によれば、政府・与党は少子化対策の一環として、病院に分べん費用を直接払わず、公的に出産できる制度を来年度から導入する方針だという。

  また、追加景気対策で、妊婦や胎児の健康状態をチェックする「妊婦健診」の無料化方針も明記された。妊婦健診は、現在5回分が無料となっているが、出産までに必要な14回分を無料化する方針だという。(読売新聞2008年11月3日朝刊より)

 これは、若い夫婦が費用を心配せず、出産しやすい環境を整えることや、出産費用を病院に払わない親もいることから、医療機関の未収金対策としての狙いもあるらしい。

 しかしながら、最近の産婦人科をめぐる様々な報道をみるにつけても、ふと思うのだ。自分が妊婦だったときのことを。

 4人の子供をダラダラ、期間をあけて産んでいるので結構、長く産科にはお世話になった。

 最初の子のころ、自宅出産とか、ラマーズ法とか、ブームだった。おうちにお産婆さんがきてくれて、水中出産もできるとか、いろいろ面白そうな話があった。

 「えー、そんなの大丈夫なの?」と友人にきいたら、「だって、お産は病気じゃないし、産科の先生なんて、ほんとはいらないのよ。妊婦さんのチカラと助産婦さんのチカラで乗り切るし、研修医おわったばっかしの先生なんて、いるとかえって邪魔らしいわよ」

 友人の言葉どおり、最初の長女は、すんなり産まれたし、次のこどもは、破水してもなかなか陣痛がこなくて、分べん台にはりつけになっていたけど、あんまりにも長丁場で、産科の先生はどこかいっちゃうし、しょうがないので、 お友達になった助産婦さんと、次にいつ陣痛がくるか、当てようと賭け事をして暇つぶししている始末で。

 そうこうしているうちに、あっと言うまに、産まれて、そのときも産科の先生は、コーヒー飲みにいってて、先生がもどってきたときは、もう長男はこの世にお出ましでございました。

 しかも、妊婦健診にいたっても、あまりマメに行った覚えもなく ほんとに、あの頃、友人がいうように、こどもは勝手に産まれるし、産科の先生って、必要ないのよねと本当におもっていた。

 が、である。何度産んでも学習しない、お馬鹿な妊婦は、次の出産でようやく、お産がいかに、重要で、つつがなく終えるためには細心の注意が必要なんもだということにきがつくのである。

 23週の早産で手のひらのうえの赤ん坊を産んだことによる困難は、今までもこのコラムでかいてきた。

 早産で未熟児産んだら、どんな人生が待ってるかなんて、誰も教えてくれなかったし、アタシがいちばんお馬鹿なのだけれど、悔やんでも悔やみきれない、人生の落とし穴が待っていた。

 田舎の母の手助けを断り、自分で家で家事をやりながら、育児をこなすには双子の妊娠は重すぎた。もっと健診時の産科の先生のいうことをなんできかなかったのだろう。

 発達障害もふくめ、障害を抱えて生まれてくるこどものかなりの割合が、周産期のトラブルに起因するとおもう。

 お産婆さんの時代からそういう割合はおそらく今よりはもっとおおかった のだろうけどれど、そういう子どもたちは、ならわしとして、「お戻りいただいた」のだという。人権意識と先端医療の進歩で、少し前までは数少なかったことだが、

ハイリスクの子供たちが救命されてしまう。その先に、どんな人生が待っているかはおわかりだとおもう。およそ、国の予算上からも、将来の障害支援のかなりの部分が周産期のケアで小さくできるのではとおもう。

 産科医療をめぐる問題は、制度の充実もさることながら、つつがなくいのちを産み出すという一大事業の重さを、社会全体で共有して、おバカな妊婦の自覚を促し、悲劇を食い止めるという点にあるのではなかろうか。
javascriptの使用をonにしてリロードしてください。
コラムニスト一覧
(C)2005-2006 shin-senken-soui no kai all rights reserved.