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コラム
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(掲載日 2008.12.16)

 かつてはそのアイデアと技術力で世界中をうならせたソニーが、来年度末までに正社員8,000人を含め国内外で合計16,000人以上をリストラするという。

 来春からの社会人生活に胸を膨らませていた大学卒業予定者の内定を取り消す企業も続出している。派遣社員の首切りや冬のボーナスをはじめ賃金カットは当たり前だ。

 こうした状況を「恐慌」と呼ばずして何と呼んだらいいのだろう。

 にもかかわらず、政府・与党は総額2兆円の「生活支援定額給付金」支給を柱とする08年度第2次補正予算案の国会提出を来年1月に先送りした。

 麻生太郎首相はその理由について@年末における中小企業の資金繰り対策としては第1次補正予算に盛り込んだ総額9兆円の信用保証・貸出枠の拡大で十分といえるA金融機能強化法成立後、年度末にかけての資金繰り対策として信用保証・貸出枠のさらなる拡大を盛り込む必要があるB法人税の減収も視野に入れて編成しなければならない―などと説明している。

 誰しも「『政局より政策だ』と言ってきたんじゃなかったのか?」と憤りのツッコミを入れたくなる。

 最近の内閣支持率の20%台への急落は麻生首相の数々の失言も影響しているだろうが、最大の理由は緊急経済対策への腰の据わらなさに国民が失望しているためだろう。

 だが、その責任は政府・与党にだけあるのではない。安倍〜福田〜麻生政権と、文字通り、政策より政局を優先してきた野党の責任も大きい。

 とくに、民主党は政府・与党を衆院解散・総選挙に追い込み、すでに多数を握る参院だけでなく、衆院でも過半数を獲得して政権交代を実現するというシナリオに固執してきた。

 それが、政府・与党との話し合いの最大の障害となり、政治の停滞を招いてきたことを忘れてはならない。

 党首会談で第2次補正予算案の審議に応じることを表明した小沢一郎民主党代表を麻生首相が「信用できない」と切って捨て、小沢氏が「チンピラのいいがかりのようなものだ」と切り返したのも、与野党間で基本的な意思の疎通さえできない政治の現状を象徴するできごとだ。

 11月下旬、都内のホテルで開催されたシンポジウムの会場で、一人の老人の講演する姿が大型モニターに映し出されていた。

 聖徳太子の十七条憲法にある「和をもって貴し」とする融和の精神を説き、八百万の神々が談合する姿を例にとり、衆知を集めて物事を決することの大切さを訴える。その前提は、自分自身をしっかりと認識し、主体性を失わないことだという。

 大画面から訥々と語りかける老人は松下電器(現・パナソニック)の創業者・故松下幸之助氏。1977年3月に「日本伝統の精神の上にさらなる繁栄を」と題して関西師友協会で行った講演の一部だった。

 最近の世論調査では麻生首相より小沢氏の評価が高いらしい。だが、いずれの調査も二者択一方式にもかかわらず、小沢氏も半数以上の支持を得ていないケースがほとんどだ。

 内閣支持率が下がれば下がるほど与党側は衆院解散に踏み切ることができず、総選挙は09年9月の衆院任期切れを待つことになる。

 それまで、現在のような、与野党の話し合いが行われず、駆け引きだけの政治が横行することを、国民は黙ってみていなければならないのだろうか?

 故松下氏の評価はおくとして、氏が訴えたように、政治の基本は問題解決に向けた話し合いである。そのための衆議院、参議院であり、与野党間の十分な政策論争が行われない国会は無用の長物だ。

 参議院で野党が過半数を占める状況は少なくとも3年から6年は変わらない。だから、なおさら与野党の話し合いが必要になる。

 国際社会における日本の役割が変わりつつある中で、政治はどこに行こうとしているのか? 与野党双方のリーダーは自らに課された責任を痛感すべきだ。

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