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コラム
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(掲載日 2009.01.06)

 「大恐慌の再来」、「100年に1度の非常事態」といわれた年が過ぎ、新しい年を迎えた。しかし世界の厳しい経済環境は依然変わらず、むしろ悪化している。新年の景気はどうなるのだろうか。

■日本は更なる不況に

 日本経済は、2002年2月から2007年10月まで、「いざなぎ超え」といわれた長期にわたる好況を謳歌したことになっているが、1994年から続いている「デフレ」下の好況であり、景気の実態は、絶好調の海外景気に引っ張られたものだった。

 したがって輸出企業中心の好況であり、国民には好況という実感はほとんどなかったといえるだろう。

 世界経済は「デフレ懸念」の中で新年を迎えたが、日本経済は自身の長期にわたるデフレから脱却できないままに、次の世界的な大きなデフレの波に翻弄される可能性が出てきた。

■世界デフレの可能性は

 世界経済の「デフレ懸念」の可能性を考えるために、日本経済が10数年間もデフレから脱却できていない原因を簡単に整理してみよう。

■日本の失敗

 日本経済がデフレに陥り、そこから脱却できない原因は、政策の遅れや失敗だと言われている。具体的には、
・1990年、日本銀行は資産価格暴落の最中に2度の大幅な金融引締めを行った
・その後、利下げに転じたが、そのスピードは極めて緩慢だった
・景気動向が持ち直しを見せ始めた1994年に消費税増税を決めた(実施は1997年4月)
・1997年からの金融システム不安への対応が遅れた
・2002年に担当大臣が大手銀行倒産の可能性を示唆した
・内需絶不調の中で、絶好調外需に引っ張られた経済を「好景気」と錯覚した
などである。そして今回も、
・サブプライムショックを、当初は「対岸の火事」として傍観していた
・金融政策が後手に回っている
・景気対策がなかなか実施されない ことなどが、デフレを深刻化させている。

■今回の海外政府の対応

 一方、米国を中心とした海外政府の今回の対応は、1990年以降の日本の場合に比べて、金融機関などが保有する資産(債権)価値の劣化スピードが速いとはいえ、金融政策や経済政策の対応スピードが極めて速い。

 例えば、資産バブルが崩壊してから、中央銀行が「異例の超金融緩和(象徴的には実質的なゼロ金利)」政策を採用したのは、日本の場合は10年後だったが、米国の場合は僅か1年余りで採用した。

 景気対策のスタートも、日本はバブル崩壊後2年余り経ってからだが、米国は半年余りで実施した。

 更に、世界各国は今回の危機に対して、危機を正しく認識するとともに、日本の失敗を反面教師にして正しい方向で対策を実施している。

■世界デフレは避けられる可能性

 世界経済は「デフレ」を避けられるのではないか。各国の政策宜しきを得て、短期的な物価下落や景気悪化は避けられないものの、「大恐慌」、「100年に1度」ではなく、「10年に1度」に近いもので済む可能性が高いのではないか。

 今回のサブプライム・ローン問題顕在化後の株価下落率が、欧米では今のところ40%強で済んでいることも、その可能性を示唆している。

■日本のデフレは更に悪化

 ただし、日本の場合は長期に渡るデフレ下の世界同時不況なので、他国よりもダメージがかなり大きく、株価下落率も60%以上と欧米の5割増しだ。したがって、日本経済の回復は欧米よりも遅れる可能性が高いだろう。

■急がれる景気対策の実施

 残念ながら、新年の日本経済は明るくないが、その痛みを少しでも和らげるために景気対策の実施を急いでもらいたいものである。

 日本は「長期に渡るデフレ」の中、世界第3位だった国民1人あたりGDPが、いつの間にか19位まで落ちてしまった。

 日本はいつまでも世界の反面教師であり続けるべきではない。

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