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コラム
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(掲載日 2009.02.03)

 先日、年金記録の訂正と非正規労働者の雇用対策を取材するため、社会保険事務所とハローワークに行ってきた。「今でも3、4時間待ち」と嘆く社会保険事務所職員、「反応はイマイチ」と手持ちぶさたのハローワークの職員。

 対照的な雰囲気に、ため息が出た。「政治・行政が国民のニーズに応えられなくなっている…」。

 最近、二つの数字が発表になった。「2562万」「12万4800」。前は、持ち主不明の年金記録(いわゆる“宙に浮いた年金”)約5000万件のうち未だに特定できない件数(昨年12月末現在)、後が、派遣労働者ら非正規労働者の失職見込み数(昨年10月からことし三月末)だ。

 要は、宙に浮いた年金の半数が未解明であり、今後も失業者が増え続けるという厳しい現実を示している。

 いまいちピンと来ないと思うが、高齢者世帯の6割以上がほとんど年金で暮らしている。経済誌が資産運用や企業年金などの話を時々掲載しているが、それは「成功した自営業者や大企業・公務員OBらを対象とする記事であり、普通の年金受給者とは無縁と考えている」(親友の経済専門誌編集長の話)といのが現実。

 その年金が怪しくなっている。年金不安ではなく、年金暮らしの高齢者世帯の間で生活不安が広がっているのは当然だろう。

 もはや、日本は、新自由主義のエセ経済者らが規制緩和(一部の民間を潤すために)を強行しようと喧伝してきた“社会主義的資本主義国”どころではない。主要先進国の中では、とうに米国に続く“格差大国”に変貌している。

 特に高齢者世帯間の所得格差は深刻なものがあり、年金などの社会保障のよる所得再配分が機能しなければ、米国どころの話ではなくなる。

 折しも、麻生太郎首相がダボス会議で「日本は世界第二の経済大国としての責任…」と常套句を披露していた。情けなくて、泣けてきた。

 話がそれた。年金記録の回復作業が遅れているのは、訂正の申請が殺到し、社会保険事務所や社会保険業務センターの処理能力を超えているためだ。訂正が認められても、正規の年金を受け取るまで全国平均で約9カ月もかかっているという。

 これでは生存中に正規の年金を受け取れないケースも出てくる。社会保険庁は職員を190人増員するというが、足りるのか。

 非正規労働者の増加と失職は、単なる雇用対策だけでは対応できはずがない。一例として、政府、与党は雇用保険料を引き下げ、引き下げ分の財源で企業に雇用を促すというが、その程度で失業率が回復するなら、苦労しない。的確な対策と相応の財政支出が必要だ。

 「派遣や期間で働く人が(正社員として)就職するには、相応の技術と経験が不可欠なんです。彼らには、そのチャンスも金もない。

 現状では、求人があっても、採用されない。そのことを彼ら自身が一番よく知っている」とハローワーク職員は漏らす。

 医療や介護、福祉分野への転職が話題になっている。この日、取材に応じてくれた40歳の元期間社員は「介護の仕事を紹介されたが、パートで、給料は期間工時代の半分以下。ぜいたくは言えないが、高校生の子どもがいるし…」と力なく語った。

 派遣労働者は失職した後、再び派遣に戻るケースが多かった。今回は、戻る派遣の仕事がない。現役世代の生活保護の申請が増え、受診抑制の流れが確実に進んでいる。

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