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(掲載日 2009.03.24) |
■株価暴落
昨年9月15日のいわゆる「リーマン・ショック」により、小康状態にあった世界の株価は急落した。「大きすぎて潰せない」はずの金融機関が倒産したからである。
サブプライム・ローン問題が顕在化したあとの米政府の対応は、当初は多少出遅れたものの、金融危機対策のお手本のような完璧なものだった。しかし、その時だけは何故か、大手金融機関の倒産を容認したのである。理由は未だ判明していない。
■遅れている日本の景気対策
リーマン・ショックを受けて、世界の中でいち早く景気対策を表明したのは日本だった。麻生太郎首相は昨年10月、定額給付金支給を含め、事業規模で27兆円(真水で4.8兆円)の景気対策を打ち出した。しかし、国会で関連予算が通り、実際に景気対策が始まったのは今年の3月である。
景気対策はスピードが重要だ。景気対策が必要な事態とは、言うまでもなく景気が悪化しているときだが、経済指標は1〜2ヵ月遅れで発表されるので、認識に遅れ(ラグ)が出るため、手遅れになりがちだからだ。ちなみに、昨年10〜12月期GDP(国内総生産)が発表されたのは今年の2月16日である。
世界的な大不況にもかかわらず、景気対策を行うまでに半年近くもかかったのは、いわゆる「衆・参議院のねじれ」が原因だといわれているが、国会への二次補正予算の提出が遅れたことが大きい。麻生首相は予算策定の手順を誤り、最初のとりまとめを関連の省庁に依頼しなかったといわれている。
■前回の金融危機
ところで、今回の景気悪化は欧米の金融危機が発端だが、1997〜1998年には日本で金融危機(金融システム不安)が発生、景気が悪化し株価は大幅に下落した。当時の状況と最近の状況を比較し、今後の景気や株価の動向を考えてみよう。
1997〜1998年の金融危機も未曾有のものだった。大手金融機関が次々と倒産し、早朝から金融機関の玄関に行列が出来、「次(に倒産するの)はどこか」という不安が広がっていた。
1998年3月、政府は金融機関に公的資本を注入したが、危機は収まらなかった。そこで、政府は10月に、金融機関に更なる公的資本を注入するために、「金融再生法」を成立させ、金融危機はようやく沈静化し始めた。
政府が翌1999年3月に再度公的資本を注入すると共に、日銀が歴史に残る「ゼロ金利政策」を行ったことから、日本はようやく金融危機を脱することが出来た。
■当時のGDPと株価
この間の経済状況をGDPで見ると、四半期ごとの前期比実質成長率は、1997〜1998年は概ね一進一退を繰り返していたが、金融再生法案が議論されていた1998年7〜9月期は+0.5%、10〜12月期は+0.2%で、1999年1〜3月期は▲0.8%だった。その後は概ねプラス成長になり、経済は安定した。
一方株価は、日経平均株価で見て、金融再生法が成立した1998年10月に12879.97円の安値をつけた後揉み合い、公的資本再注入やゼロ金利政策がとられた翌1999年春ごろから、上昇に転じている。
景気と株価の関係を見ると、景気のボトムは1999年1〜3月期だが、株価は景気に先行して前年の10月が安値になっている。なお、この間実施された景気対策は、予算ベースの真水で1998年に28兆円余り、1999年も7兆円弱と、極めて大掛かりなものだった。
■今回のGDPと株価
現在、日本の景気動向は、四半期ごとの前期比実質成長率で見て、昨年4〜6月期が▲1.2%、7〜9月期が▲0.4%、10〜12月期が▲3.2%で、今年1〜3月期も大幅なマイナス成長が見込まれている。ただ、4月以降は依然景気は悪いものの、景気対策期待から下げ止まりが予想されている。
一方、日経平均株価は、昨年10月のザラバで6994.90円の安値をつけており、今のところこの安値は更新されていない。今回、春以降の景気が下げ止まるとすると、前回と同様に昨年10月が株価の安値だった可能性が出てくる。
■株価底入れの条件
ただし、今回予定されている景気対策は、前回ほど大掛かりなものではなく、しかも実施が遅れ気味だ。また、日銀の金融政策にも「景気を良くするためには何でもする」という熱意が感じられない。
景気対策や金融政策は、政府や日銀がその気になれば行えるものであり、すぐにでも実現可能である。「昨年10月が株価の安値だった」と、あとから言えるような実効ある政策が望まれる。
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