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コラム
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(掲載日 2009.04.14)

 いま、ビジネス誌が面白い。現役記者時代を思い起しても、さほど興味をもって読んだ記憶がない。ところが、この不況下、政治や行政を批判する特集記事の大見出しを目にしてしまうと、つい手に取ってしまう。

 できれば、そんな政府・与党を物心両面から支え続けている経営者や経済団体を徹底的にやっつけて欲しいところだが、そこがビジネス誌の“最大の弱点”だったりして…。 

 「ダイヤモンド」の3月21日号の特集は、ズバリ「あなたの知らない貧困」。黒地に白抜きの表紙には「年収200万円以下の人口1032万人」「先進国ワースト4位」「子ども7人に1人が貧困」「生活保護を受けられない困窮者最低600万人」などの見出しが並ぶ。本文は「正社員も“貧困層”転落する恐れがある」と警告する。

 今冬、日比谷公園に出現した「派遣村」に対し、「あれは特定団体のパフォーマンス」と“したり顔”でコメントしていた評論家がいたが、派遣村の色分けより、貧困層に属する国民が確実に増えている事実を直視すべきだろう。派遣労働者の失業は、住む家さえなくなるという最貧困への転落を意味する。

 今回の雇用悪化と政府の緊急対策で分かったことは、雇用保険も社会保険もセーフティーネットとして不完全で、失業すれば、即、生活保護に頼らざるを得ない労働者が大勢いるという実態だ。

 「ダイヤモンド」の示した数字には、異論もある。たとえば、日本には貧困の定義がない。年収200万円以下が貧困の基準と言えるのかどうか、衣食住だけ満たされていれば貧困ではないのか…。定義付けることは難しい。

 それでも小泉純一郎や竹中平蔵の構造改革コンビが「日本には貧困層は存在しない」と強弁した見解が完全な誤りであることが証明された。

 先日、久しぶりに横浜のハローワークをのぞいた。「派遣切り」「派遣止め」に遭う機会が多い製造業の求人は減ったが、小売りなどのサービス業はさほどではない。

 それだけ人材不足が深刻になっている。だが、待遇といえば、月に20-25日働いても税込み20万円程度。賞与も昇給も期待できず、社会保険さえ完備していない求人が結構ある。

 月給20万円に12カ月を掛けると、年収240万円。年を重ねても200万円台では、子育てどころか、結婚も難しい。

 「ダイヤモンド」は「貧困家庭の子どもは大人になっても貧困に陥る可能性が高い」と指摘し、ハローワーク職員は「正社員がいったん非正規労働者になると、正社員に戻ることは難しい」と話す。

 実態を直視しないマスコミには、相変わらず「格差」の文字が踊っているが、格差どころか、確実に「貧困」が拡大している。

 与野党とも、少子化対策として「出産手当」や「育児手当」の増額を掲げているが、そういう次元の問題ではないのだ。  

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