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コラム
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(掲載日 2009.06.09)

 西松建設からの巨額献金問題で小沢一郎氏が民主党代表を辞任、鳩山由紀夫氏が後継代表に就任した。“鳩山民主党”は小沢時代の「生活第一」路線を継承し、次期衆院選での政権交代に全力を挙げる構えだ。

 小沢氏辞任後の各種世論調査で民主党は支持率を回復している。まずはめでたしというところだろう。しかし、鳩山民主を取り巻く政治環境はそれを手放しで喜んでいられない状況だ。

 国会は55日間延長され、会期末は7月28日となり、国会法12条で再延長は認められていない。衆院の解散は国会会期中に限定されないが、常識的には、12月中・下旬に解散し、遅くとも9月上旬までに総選挙を実施するというシナリオが有力だ。

 その場合、投開票日の候補は8月9日、30日、9月6日となる。 にもかかわらず、鳩山民主の動きは活発とは言えない。

 選挙対策は代表代行にとどまった小沢氏に任せたまま。さきごろ国民新党の候補予定者南関東ブロックに転出することで決着した神奈川1区の調整についても、鳩山氏は十分な説明を受けないままに「民主候補に一本化」と発言し、国民新党側から「軽率」との批判を浴びた。

 鳩山氏はどうやら、就任当初からの「小沢院政」批判を意識しすぎているようだ。「自らのリーダーシップで」と強調すればするほど、周りは小沢氏の影を感じるというのに、だ。

 マニフェスト(政権公約)の目玉に何を据えるかも未だに定まっていない。

 民主が自民との違いを浮き彫りにするために検討している世襲制限や西松献金への反省を示すために打ち出した企業・団体献金禁止などはしょせん政治家の側の問題である。

 旧民主党旗揚げ当時から掲げている「官僚主導の打破」も、国民生活への直接的影響が明確でなく、スローガンにとどまっている。

 ある民主党幹部は「国民は自民党政治、麻生政権に飽き飽きしており、『政権交代』一本で押し切ればいい」と語ってくれたが、現実政治はそんなに甘いものではない。

 米国でオバマ大統領が民主党への政権奪還に成功したのは「チェンジ」という単純なメッセージの裏側に、共和党政権時代に民主党が周到につくりあげてきた政策プログラムがあったからだ。

 官僚政治の打破を唱えるのであれば、霞が関により多くの政治家を送り込むという外見的な方法論だけでなく、それによって、霞が関をどう変えていくのか、国民生活にどういう好影響を生むのかをきちんと説明しなければいけない。

 麻生政権はこのところ社会民主主義的政策を打ち出そうと躍起になっている。総選挙に向けて左ウイングを広げ、民主党への政権交代に多少とも不安を抱く有権者を取り込もうという戦術だ。

 一時期浮上した厚生労働省の分割・再編論もそのうちの一つだ。麻生首相が喧伝してきた「安心・安全の政治」の具体化にもつながる。

 麻生首相は「分割なんて言っていない」と先送りを表明したが、マニフェスト作成段階で「厚生労働行政の抜本的見直し」といった形で再浮上する可能性も否定できない。

 世論調査における政党支持率の変動ぶりを見ればわかるように、世論は移ろい易いものだ。

 鳩山民主はどうやって「生活が第一」を実現するのか、4年間封印する消費税論議も含めた具体的な姿を早急に国民に示すべきだ。

それを怠ると、民主党による政権交代のチャンスは永遠に失われることにもなりかねない。

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