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(掲載日 2009.08.11) |
今回の総選挙で「政権交代があるのではないか」との見方が出ている。そこで、仮に政権交代があるとすれば、景気や株価にどのような影響があるのか考えてみよう。
■景気の現状と各国の対応
一昨年夏、「サブプライム・ローン問題」が顕在化し世界景気は減速し始めた。各国は当初やや出遅れたものの、通常の不況時と同様に金融緩和を中心とした金融政策で対応し、状況は一旦落ち着いたかに見えた。(注1)
しかし、昨年秋の「リーマン・ショック」を契機に、世界景気は「100年に一度」といわれるほど劇的に悪化し、先進国の株価は押しなべて「サブプライム・ローン問題」前の半値ほどに下落した。
各国はこの未曾有の大不況に対し、政府による巨額の財政出動や大手金融機関への公的資金注入、中央銀行による国債買い入れや民間企業への資金供給など、巨額の財政赤字や金融政策の規律を省みないタブー無しの対策を実施している。
こうした危機対策や劇的な景気悪化の反動から、先進国の景気や株価は最近ようやく底打ち気運が出てきたが、まだまだ予断を許さない状況が続いている。
■政権交代で景気対策は中断か
日本の政策は官僚主導で決定されるため、政権交代があっても景気や株価にはほとんど影響がないとされている。ただ、国民の福利厚生の極大化という目的は同じでも、目的を達成するための手段や方法は各政党によって異なる。政権が交代すれば、手段や方法である政策が変わるのは至極当然だ。
仮に今回の総選挙で政権交代があれば、前政権の政策実施のために組まれた予算は、継続せざるを得ないものを除いて執行が停止されるだろう。新政権の下、今年度分については新たに補正予算が組まれることになるが、政策の方針転換や予算作業の不慣れなどから、補正予算策定にはかなり時間がかかるのではないか。
また、現政権の下で既に策定作業に入っている来年度予算についても、政権交代で見直されることになり、成立が大幅に遅れるのではないか。
■景気や株価は難しい局面へ
通常の不況であれば、政府から独立性が高い中央銀行の金融緩和策が不況対策の中心になるので、政権交代による景気への影響は軽微だ。だが「100年に一度」の状況では、政府による景気対策の内容や実施時期がきわめて重要なので、政権交代による補正予算策定や来年度予算成立の遅れは、景気回復を阻害することになる。
日本経済はこれまで内需よりも外需主導で伸びてきていることから、今回も海外景気の回復に助けられる可能性はあるものの、仮に今回の総選挙で政権交代ということになれば、日本経済や株価は難しい局面に入ることが予想される。
(注1)景気循環で見られる通常の不況(景気後退)は、景気が過熱し物価が上昇した時に、インフレ昂進やバブル発生などを抑制するために中央銀行が金融引締めを行うので、需要が減速して起きる。ただ、景気過熱の原因になる需要は、基本的には無限にあるので、不況期には金融を緩和すれば、抑制されていた需要は増加し、景気は回復に向かう。
一方、日本の「バブル崩壊」や「リーマン・ショック」などのように、無限にあるはずの需要が崩壊し、市場が十分に機能しなくなったときには、金融緩和策に加えて、政府が財政支出などで不足している需要を補い、市場にも介入しなければ、経済は正常化しない。
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