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コラム
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(掲載日 2009.10.20)

 民主党中心の政権に交代して数十日が経過した。民主党が政権構想を練る時間は十分にあったので、民主党に投票した国民は、民主党が掲げた「マニフェスト」は実現の可能性が高いと期待していたはずだ。

 ただ一方で、「マニフェスト」に掲げられた「充実した福祉政策」には、選挙中から財源問題が指摘されていたため、国民も全ての政策が実施されるとは考えていなかったものの、国民に優しい政策がとられ、年金・医療などの社会保障制度や景気への閉塞感は、打破されると信じていたのではないだろうか。

■サプライズ

 だが、国民の期待と現実は微妙にずれ始めており、閉塞感が再び広がってきた。

 新政権がスタートして先ず驚いたのは「ダム建設中止」の件だ。民主党は「マニフェストに掲げて選挙で信認を得たのだから中止は当然」とのことだが、建設中止の是非は別としても、いかにも配慮不足で手順が悪い。

■野党のマニフェスト

 「野党のマニフェスト」は、政策公約の色彩が強い「与党のマニフェスト」とは異なり、与党の政策の問題点を突くためのものなので、その集積が政策全体として整合性のとれたものではないことは常識である。

 したがって、野党が政権与党になったら、「マニフェスト」を中心にした「整合性の取れた政策」を構築しなければならないのだが、いきなり「マニフェストという水戸黄門の御印籠」を出されてしまったので、国民は驚いたのである。

■補正予算削減

 更に、「100年に一度」の危機から脱出できない中で、2009年度補正予算の一部執行停止・削減は、政権交代前から予想されていたこととはいえ、国民に景気に対する不安を増幅させるものだ。

 鳩山政権は、今回の補正予算の執行停止や削減を実施する場合、不要・不急として削減する理由や、執行するはずだった時期などを明示し、景気対策との整合性を説明する必要があるのではないか。

 また、政府は日銀に対して金融緩和政策の後退に釘をさしている一方で、景気の現状は追加の景気対策が必要ではない旨の発言をしており、こうした発言もちぐはぐな印象を与えている。

■日本経済の実力を表す株価

 日本経済は今年4〜6月期のGDP成長率が前期比でプラス(実質成長率:前期比年率+2.1%)に転化し、景気底打ち感が出てきたものの、雇用情勢などに見られるように依然景気は低迷している。

 日本経済の現状は、実感に近い名目GDPで見ると1992年頃の水準であり、直近のピークから▲8%(金額では▲40兆円)も減少しているにもかかわらず、新政権は前政権で景気対策として打ち出した補正予算を削減する意向だ。

 一方、米国の名目GDPはピークから▲3%ほどの減少であるばかりか、1992年との比較では2.2倍以上に増加しているにもかかわらず、「100年に一度」を十分に認識し、景気対策の手を緩めていない。

 こうした経済状況や、彼我の政府の景気対策への取り組みの違いを考えると、先進国の中で日本の株価だけが低迷しているのは、むしろ極めて自然な姿だといえるのではないだろうか。
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