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コラム
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(掲載日 2009.11.10)

 自然発生する医療需要に適切に対処し、健康の維持と命を守るために医療専門職種、特に医者の存在価値がある。医療法、健康保険法などはその役割が円滑に果たされるよう、付随する問題を解決する手段として位置づけられている筈である。

 しかし、時として主客転倒の議論が先行し、結果として国に恣意的に管理された医療や医療体制が形作られてきているように思われる。以前、日本医師会役員として医療政策の立案などに関与していたが、基本は「お上」によって管理され、捻じ曲げられる医療や医療体制に反旗を掲げ続けた8年間だったように振り返っている。

 最近の医師会活動が、ともすれば「お上」の連絡網や、「お上」の下請け的な役割しか果たしていない印象を持つのは私だけだろうか?

 産科や小児科医師の不足や偏在に伴う医療体制の不備、救急救命医療体制の不備など、地方行政との連携によって解決を図らなければならない問題は多い。それに加えて、医師会独自に会員の協力を得て問題解決に汗を流さなければ、医師会への地域住民の信頼は得られない。地域住民の信頼がなければ、中央での日本医師会活動の評価に結びつかない。

 残念ながら、個々の医師はわが身の保身に汲々として足元しか目に入らない。「余裕のない診療」に押さえ込まれてしまっているからである。しかし、もう一度医療人としての「初心」を思い出し、視野を広くして地域や社会のニーズや変化に対応する努力が必要だ。

 多様化する患者ニーズに対応するためには「スーパーマン医師」が求められている。しかし、「スーパーマン医師」などいるはずもなく、個々の医師では適切に対応できる範囲には限界がある。従って、地域における医療体制を社会ニーズや患者ニーズに合致させるためには組織的な対応が求められ、地域の医師集団としての医師会組織がリーダーシップを取って課題を解決してきている。

 中央における日本医師会の役割は、現場を支える地域医師会の活動を円滑ならしめることにあるが、果たしてその役割は果たされているだろうか?

 この数年政治家の、医師・医師会に対するネガティブな発言が相次いでいた。更に、新しい政権が誕生して、医師会無用論のような極論まで噴出しているような雰囲気すら感じる。

 医師会活動とは無縁の、各種医療団体組織がそれぞれの利益代表として重用され始めて、医療関係者の分断政策が更に加速させられている。「病院対診療所」、「町医者対勤務医」、「民間病院対公的病院」等々、医療関係者(医師、医療機関経営者)の分裂傾向とそれを利用した分割統治の流れが顕著になってきた。

 医師会組織が国民、地域住民の健康と命を守る立場でいる限り、それ以外の利害が異なるとしても、医師としての考え方に相違は無いはずである。医療関係者が一致団結して対応しなければ、臨床の現場や地域の医療に発生している問題は解決されない。  

 我々は地域での医療と医師会活動を粛々と地道に遂行することにより、医師会の存在価値を地方から発信できるよう心がけるべきである。時の政権にパイプがあるから今後の医師会活動の先頭に立ちたいなどと言わせ、その人を医師会組織のリーダーに祭り上げるような医師会では国民の支持は得られない。
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