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コラム
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(掲載日 2009.11.17)

 ワクチンの生産可能数の変化はおもしろい。

 厚労省は、当初、2500万人分程度(2回接種)の生産が可能だとしていた。

 これが7月に、1700万人分に下方修正される。それでは例年の季節性のインフルエンザにも満たない数しか確保できない。

 そこで、承認されていないワクチンを緊急輸入することになった。すったもんだしたあげく、5000万人分の確保が可能となり、10月に正式契約にこぎつける。

 一方、政権交代のどさくさに紛れて、国産ワクチンの量が2700万人分に上方修正される。

 その経緯について、長妻昭厚労相は、先日の参院予算委員会で舛添要一前厚労相に、次のように説明した。

 1700万人分としていたのは、生産量を堅く見積もっていたためで、2割ほど低い数字を公表していた。実際に生産を始めたところ、当初に見込んでいたように生産ができていることが確認できたために上方修正した。

 それと、1ミリバイアルの容器だけでなく、10ミリバイアルも使うことにした。1ミリを使うと無駄になるワクチン液があるため、大きな容器にすることでより多くの人にうてるようにした。

 なるほど、手堅く公表しておいて、実際の生産が確認できたところで、より実際に近い数字を公表するとは、さすがは厚労官僚、国民の期待を裏切らない、と言いたいところだが、この数字を素直に受け止めてはいけない。

 まず、1700万人分が2割ということは、10割は2125万人分となる。

 これでは2700万人分にならない。それは、1ミリバイアルを使うよりも、10ミリを使ったほうが無駄が少なくすむためという。

 そこで、厚労省発表の資料の10ページを見てもらいたい。

 これによれば、1ミリと0.5ミリを合計して1529万人分が供給される。

 ということは、2125万人との差から考えて、1ミリであれば596万人分だったものが10ミリに変わったと考えられる。計画によれば、10ミリで1172万人分が供給されることになっている。

 10ミリバイアルにすることによって、1ミリの倍近くの人に供給できることになる。ということは、1ミリバイアルには実際にはほぼ倍のワクチン液が入っている計算になる。ところが、実際には、1割増しぐらいの量しか入っていない。ここで、供給量に大きなギャップが生まれることになる。

 では、2700万人分というのはどういう数字なのだろう。

 ここで、ワクチンを優先接種する人の想定を思い出してほしい。

 妊婦や基礎疾患がある人たち5400万人とされる。ちょうど、半分が供給されるということだ。

 さて、いま、ワクチンをめぐる話題でホットなテーマのひとつに、1回接種か2回接種かがある。1回接種になれば2倍の人にうつことができ、2倍のスピードで接種を進めることができるようになる。本当ならありがたい話だ。

 それにしても、優先接種者の数の半分の供給量が示されていて、その計算根拠がどうもあいまいだということは、不思議な話ではないか。

 根拠がないので断定はできないが、筆者は、ワクチン1回接種になることを想定して、国産ワクチンだけで優先接種者分をまかなえるという雰囲気を作るために、そろえられた数字のような気がしてならない。

 厚労省は、いま、躍起になって1回接種に持っていきたがっているようだが、もし、それが国産ワクチンだけで新型インフルエンザワクチンの接種を終わりにしたいがためでないことを祈りたい。科学的な根拠にもとづいて接種回数を決めなければ、せっかくの接種も中途半端なものになりかねないためだ。
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