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(掲載日 2009.12.22)

 「スペース・イシュー」という言葉を知って、なるほどと思った。「宇宙のこと」とでも訳すのだろう。鳩山由紀夫首相の言動についてこれほど適切な評価はない。

 鳩山氏はかねてから自分のことを「宇宙人」と称してきた。いわゆる「永田町の論理」にとらわれない、改革精神に富む、清新な人材だということを宣伝するための方便だったようだが、政権を握って以降の鳩山氏の言動は永田町の論理どころか、日本人の常識をも超越しているようにみえる。

 その最たるものが、沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場の移設をめぐる発言であろう。

 政権発足前の2009年5月に鳩山氏は普天間の県外移設に言及していた。だが、それは沖縄県の有権者に「姿勢」を示すとともに、社民党などとの選挙協力をスムーズにするための、いわば「リップ・サービス」と受け止められていた。

 政権を担った当初、11月のオバマ米大統領の来日に向け、民主党内では「普天間移設は外交問題だ」として、沖縄県名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部に移設するという現行案を容認するムードが高まった。

 2010年に日米安保条約の改定から50年という節目を迎えるため、普天間問題を早期に決着させたうえで日米安保の再定義に着手し、鳩山氏と民主党が掲げた「対等な日米関係」に向けて動き出す手はずだったからだ。

 民主党支持とみられている一部マスコミが、鳩山政権に批判的な同業他社に先駆けて「普天間移設は現行案で」と報じ、キャンプ・シュワブ沿岸部以外の選択肢がないことを強調してみせたのも、こうした政権内部の思惑を反映したものだった。ニワトリが先か卵が先かの判断は分かれるが、肝心の鳩山氏も当時は「日米合意の重要性」を認める発言を繰り返していた。

 米側もこうしたシグナルに安心していたようだ。鳩山氏が09年9月の首相就任後初の訪米で「(県外移設を目指す)基本的な考え方を変えるつもりはない」と発言した際にも、「政権発足直後であり、日本国内に向けたポーズに過ぎない」(知日派知識人)との反応にとどまった。岡田克也外相や北沢俊美防衛相が、発言のブレはあったものの、日米合意を重視する姿勢を貫いていたことが、米側を油断させたともいえる。

 しかし、鳩山氏は社民党の福島瑞穂党首(少子化担当相)が同党の党首選に絡んで現行案への絶対反対を表明、「重大な決意」という表現で連立離脱をちらつかせると、またぞろ「県外移設」に走った。

 年内、それも、クリスマス前の問題決着を求める米側の意向をまったく無視する政治判断だった。

 岡田、北沢両氏との日米閣僚級作業グループの会合で、ルース駐日米大使が顔を真っ赤にして鳩山政権の「不誠実」を罵ったのもうなずける。

 米政府は12月18日を最終回答期限に設定、鳩山氏は15日に基本政策閣僚委員会で、移設先の決定を来年以降に先送りする「政府方針」なるものを決めた。

 移設先決定の期限も示していない、「方針を決めないという方針」であり、米側にとっては「無回答」以外のなにものでもない。

 鳩山氏はオバマ大統領来日時に「トラスト ミー(私を信頼してほしい)」という言葉を使って、米側の猶予を得ようとした。とりあえず、大統領は大人の対応を示し、普天間移設で鳩山氏を追及することはなかった。倫言汗の如し。その発言をなかったことにする訳にはいかない。「トラスト ミー」はその言葉の重みを逆方向に変えて鳩山氏を襲おうとしている。

 鳩山氏の言動は普天間だけでなく、国債44兆円枠、子ども手当の財源や所得制限導入、暫定税率廃止などほとんどすべての政策課題において「迷走」の一語に尽きる。

 言っていることが日々異なる。鳩山氏が何をしようとしているのか理解不能だ。誰か宇宙語を知らないか?
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