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コラム
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(掲載日 2010.03.09)

 2月18日の米株式市場の取引終了後、FRB(米連邦準備理事会)は金融機関向けの貸出金利である「公定歩合」を、0.50%から0.75%へ引き上げた。「公定歩合」はかつては中央銀行の金融政策の代名詞だったが、現在は金融機関の間で資金の貸借をする市場での金利が、金融政策を行うための政策金利になっている。

■「公定歩合」の役割

 FRBの政策金利はFFレート(フェデラル・ファンド・レート)であり、「公定歩合」は、他の金融機関から資金を借りられない金融機関が、FRBから借りる場合の金利である。 したがって、「公定歩合」はFFレートよりも少し高い金利になっており、いわば、信用力に懸念がないとは言えない金融機関が、「公定歩合」金利でFRBから借入をする。

 リーマンショック直後のように、金融システムに問題があるときは、そのような金融機関のために、FRBは「公定歩合」を低水準にする必要があった。しかし、金融システムに問題がなくなれば、FRBから資金を借りなければ資金繰りがつかない金融機関はなくなるので、「公定歩合」はあまり意味をなさなくなる。

■「公定歩合」引き上げの理由

 つまり、FRBが「公定歩合」の水準訂正を行ったのは、「金融システムに問題がなくなった」と判断したということになる。

 だが今回、市場はFRBの判断にネガティブな反応を示した。本来であれば、FRBの判断は「金融システムは大丈夫」というお墨付きなので、市場は安心するはずなのだが、市場は「安心するのはまだ早い」と警告した。市場の反応に驚いたFRBは、その日のうちに「長期に異例の低金利を継続する」と、あわてて「火消し」にまわり、市場はとりあえず落ち着きを取り戻した。

■バーナンキ議長の立場

 ただ、バーナンキFRB議長は、必ずしも「公定歩合」引き上げに賛成していなかったようだ。世界恐慌研究の第一人者であるバーナンキ議長は、まだまだ金融政策を転換する時期ではないと考えていたようだが、金融引締めへの政策転換を主張するタカ派の、いわばガス抜きのために、影響がない範囲で金融政策を変更したといわれている。ガス抜きをしなければ、実効ある金融緩和の継続に支障が出かねないと考えたからだろう。

■「100年に一度」はまだ終わっていない

 今回の一連の出来事は、人々の記憶から次第に消えつつあるフレーズである「100年に一度」、といわれた未曾有の大不況が、簡単には収まっていないことを如実に示した。

 「100年に一度」の原因となった米国の住宅や商業用不動産のバブル崩壊は、依然修復の目処が立っておらず、各国の経済は一部の新興国を除けば、依然非常時モードのままである。多くの国では、政府の経済・金融面での支援がなければ、経済は再び「100年に一度」の真っただ中に戻ってしまいかねない状況だといえるだろう。

 世界恐慌研究の第一人者でも、今回の大不況を少し軽く見ていたのかもしれない。
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