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コラム
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(掲載日 2010.04.06)

 30.1%―。低落傾向が著しい鳩山由紀夫内閣の支持率ではない。(財)日本対がん協会(対がん協)がまとめた2008年度の肺がん検診男性受診率だ。国のがん対策推進基本計画の目標は50%。国民年金保険料の納付率80%と同様、達成は至難の業なのか。

 日本人の約2人に1人が罹患するがん。がん対策は国策の一つだが、それにしても何かが足りない。

■個別勧奨の成果

 対がん協の市町村アンケート(1,107市町村が回答)によると、昨年度の受診率は、肺がんで、男性30.1%、女性32.3%だった。ただし、これは市町村が住民に個別勧奨をしたケースの数字。個別勧奨しなかったケースでは、それぞれ22.4%、24.1%。ほかの胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がんでも、個別勧奨したケースの方が受診率が数%高い数字が出た。

 個別勧奨は、市町村が住民に直接、受診を勧めたり、未受診の住民に再通知したり、がん対策推進委員が住民に働き掛けたりすることを指す。対がん協によると、多くの市町村が個別勧奨の効果を認めているものの、実際に個別勧奨を行っている市町村は全体の4割強にとどまっているという。

■取りづらい受診休暇

 市町村が住民に検診をまったく呼び掛けていないことは考えられない。広報誌、新聞の折り込みチラシ、公共施設・商業施設でのパンフレット配布など何らかの形で呼び掛けが行われているはずだ。なぜ、受診率が相応に上がらないのだろう。

 データはないが、広報誌が全戸や地域内の事業所に配られていないなど市町村の広報活動に問題があることを除いて考えると、検診を知っているにもかかわらず、受診しない人がいかに多いか推測できる。

 私見だが、こうした未受診者の中には、「自分ががんになるとは考えられない」「がんが見つかるのが怖い」「わざわざ出向いて受診するのは面倒だ」など“確信犯”も多いと考えられるが、問題は、“仕事の関係”で受診したくても受診できない人が少なくないと思われることだ。

 たとえば、人出の足りない事業所で働く人は、事業主や同僚の理解と協力がなければ、現実問題として休暇を取って受診することは難しい。私が知っていケースでは、肺がんの自覚症状を口にしながら、店長に遠慮し、検診もがん外来も受けず、倒れてから間もなく亡くなったバーのベテラン店員がいた。後日、店長は周囲に「彼がいないと店が回らなかった。『調べてもらえ』とは言いづらかった」と話していたと漏れ聞いた。

■事業主の責任

 がんが日本人の死因のトップを占めるようになってから久しい。喫煙などの生活習慣が影響するがんも多い。職場を禁煙にしたり、検診を勧めたりして、雇った労働者の健康を管理するのも事業主の責務の一つだ。

 労働者個人や行政機関に責任を転嫁し、がんで倒れて長期休職になったら、法を盾に解雇するような事業主がいる。50%達成には、確信犯へのしつこいくらいの勧奨と、こうした事業主に対する徹底した指導も必要ではないか。
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