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(掲載日 2010.05.11) |
■世界景気は順調に回復
4月24日のG20で「世界経済の景気回復は予想以上」と表明されたように、世界の景気は昨年春頃を底に順調な回復過程にある。2008年9月のリーマンショック後に、「100年に一度」の名言で、経済・金融危機対策のタブーを取り除くことに一役買ったグリーンスパン前FRB議長も、最近は「金融危機は100年に一度のものだったが、経済危機はそれほどでもなかった」旨の発言をしている。
■危機対策の手は緩まない
しかし、現実には経済もタブーなしの危機対策で、かろうじて支えられているに過ぎない。今回の危機のもともとの原因である「米国不動産バブル」は、米国政府の強力な支援策によって崩壊から底入れに向かっているものの、未だに正常化には程遠い状況にある。
先進各国の政府や中央銀行は、こうした「100年に一度」の状況を十分に認識していることから、経済の水準を元に戻し従来の成長軌道に乗せるまでは、対策の手を緩めないだろう。
■低金利は長期化
ただ、先進各国は今回の危機対策で巨額の財政支出を行っているため、景気が回復に向かいはじめてからは、財政政策よりも金融政策に比重がかかってきている。そのため金融政策は、FOMC(注)の声明文にあるように「異例の低金利を長期に渡り継続」するだけではなく、財政政策の肩代わりもしなければならない。したがって先進各国の中央銀行は、通常の不況時よりも、かなり長期に渡り低金利政策を継続せざるを得ない。少なくても年内は政策金利の引き上げがないと見るべきだろう。
■低金利は株価にプラス
「不況期の株高」、「金融相場」などと言われるように、金利が下がると株価は上がる。ただし、この場合の金利とは長期金利のことだ。通常は低金利政策が長く続けば、将来のインフレを見越して長期金利は上昇するので、今回のように低金利政策が長期化すると、株価にはプラスにならない場合が多い。
しかし、今回はインフレの心配がない大不況なので、先進国では低金利政策が続いても長期金利の上昇は抑制され、株価にはプラスに作用すると考えてよいだろう。
■企業業績もプラスに作用
一方、経済全体の水準は低いものの企業業績は回復に向かっており、企業業績を反映した株価上昇も期待できる。つまり今回は、息の長い「金融相場」の上に「業績相場」が展開される可能性があるということだ。株価指標で言えば、市場全体のPERが高水準で推移する可能性が出てきたということになる。
■日本は劣後
ただ日本は、昨年秋の政権交代に伴い主要な景気対策を中止したため、他の先進各国に比べて内需がかなり弱い。また、日本の景気回復が輸出に大きく依存していることを考えると、日本の景気や株価が海外各国に比べて見劣りすることには、十分留意しなければならない。
(注)FOMC:FRB(米連邦準備理事会・米中央銀行)による米連邦公開市場委員会のことで、この会合で米国の金融政策が決定される。
--- 長谷川公敏((株)第一生命経済研究所 代表取締役副社長)
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