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「臨床検査の意外な落とし穴」 |
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東京医科歯科大学大学院 奈良信雄教授 |
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新宿海上ビル診療所(東京都) |
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2004年12月6日(月) |
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検査を受けた人の健康状態を様々な角度から診断することができる血液検査。しかし、実際に検査を行ってみると、「多血症」と「貧血」をそれぞれ示す、相反する値が混在していたり、検査を受けた本人が健康そのものなのに重篤な状態を示す異常値が含まれたり - と診断に困る結果が出ることも少なくない。
新宿海上ビル診療所で昨年12月に開催された講演「臨床検査の意外な落とし穴」では、東京医科歯科大学大学院の奈良信雄教授が、血液検査で見落としがちな問題点や、検査の心構えなどについて実例を用いてわかりやすく解説した。
奈良教授によれば、検査で誤判定を避けるためには、血液検体を速やかに検査にかけること、やむをえない場合は血漿分離して低温保存を心がけることが原則。さらに、検査を受けた人の生活様式や健康状態、検査データに変動があるかどうか、などについても観察・分析し、総合的に判断する必要がある。
保存方法を誤った例としては、検査を受けた本人は健康そのものなのに、血液検体の保存期間が長すぎたために、カリウム値が生存者のものとは思えない高水準に達してしまった女性のケースを挙げた。また、検査を受ける人の健診前の行動によって、思わぬ異常値が出てしまうこともある。長距離マラソンをした後に健康診断を受けた男性の場合、血液のCK(クレアチンキナーゼ)値が心筋梗塞を疑われる高水準に達していたという。
また、「貧血」と一口に言っても原因には様々な疾患が考えられるという点にも触れた。ヘモグロビン濃度が低く、貧血の症状がある男性のケースでは、(1)体の動きが緩慢、(2)舌のサイズが通常より大きい、(3)コレステロール値が高い - ことなどから、甲状腺機能低下が引き起こした貧血だったことがわかった。また、血液検査で、赤血球の値が通常より多い「多血症」にもかかわらず、ヘモグロビン濃度が低いという矛盾する結果が出た20代の男性の場合、ヘモグロビンの遺伝子検査を行った結果、遺伝性の溶血性貧血「サラセミア」と診断された。
奈良教授は、こうした事例を踏まえ、血液検査の判定には、ひとつの検査のデータに頼るだけではなく、「患者さんの症状をよくみること、経過を観察すること、他の項目でも検査を行うこと」など総合的な見方、慎重な診断の姿勢が重要であることを強調した。
奈良教授の講演には、新宿海上ビル診療所や周辺の医療機関の健康診断担当の医師や看護師、検査技師など約50人が出席した。同診療所では、年に2回ほど各専門分野の第一人者による講演会を開き、「研修に役立てている」(西元慶治理事長)という。
【奈良信雄教授のプロフィール】
1975年東京医科歯科大学医学部卒業。放射線医学総合研究所、カナダのトロント大学オンタリオ癌研究所研究員、東京医科歯科大学医学部教授を経て、1999年から現職。専門は、血液内科学、臨床検査医学。主な著書に「これでわかる病院の検査」「遺伝子診断で何ができるか」「一滴の血液で体はここまで分かる」など。 |
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