米シカゴ大学が、米国の医師を対象に行ったアンケート調査で、回答者の76%が「神の存在を信じる」、59%が「死後の世界の存在を信じる」と答えたことがわかった。さらに「祭祀に参加することがある」とした回答者は90%に上った。成人の米国人を対象に行った一般社会調査(1998年)では、回答者の81%が「祭祀に参加することがある」と答えているが、医師の回答はこれを10ポイント近く上回った格好だ。
医師に信仰する宗教を尋ねたところ、全人口に比べて、医師人口に占めるヒンズー教徒やユダヤ教徒の割合が大幅に大きいことも分かった。ヒンズー教徒の場合、医師人口に占める割合は5.3%と一般人口に占める割合(0.2%)の26倍も多かった。ユダヤ教徒が医師人口に占める割合は14.1%と一般の7倍、仏教徒は1.2%と6倍、イスラム教徒が2.7%と5倍あった。
患者との対比でキリスト教徒の割合を調べたところ、医師人口に占めるキリスト教徒の割合は60%と患者(80%以上)を20ポイントも下回っていることも分かった。
医療現場以外の「日々の生活においては、自分の信仰心が影響することはない」と答えた医師は、一般社会調査の回答者より多かった(医師61%、一般29%)ものの、「医療現場において、自分の信仰心が影響することがある」と回答した医師は55%にも上った。中でもキリスト教徒、モルモン教と仏教徒の医師は、「信仰心が影響する」と答える向きが多く、逆に、ヒンズー教徒とユダヤ教徒の間では少なかった。
また、診療科目別では、家庭医や小児科医が信仰心や「神の助け」を拠り所にすることがあると答える傾向が強いのに対し、精神科医や放射線技師からはそのような回答はあまりみられなかった。
調査を行なったシカゴ大学のファー・カーリン博士は、「医師がこれほど信仰心に篤いとは思わなかった」と述べるとともに、その理由について「もともと信仰心に篤く、科学的な素養と公益サービスへの関心がある人が、医療に興味を示す傾向にあるということではないか。傷ついた人を助けなければという気持ちは、宗教の伝統にも共鳴する」と分析している。
アンケートの調査結果は、「the Journal of General Internal Medicine」(2005年7月号)に掲載された。 |