米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)神経生物学部のジャック・フェルドマン教授の研究チームは、睡眠時の高齢者の死因のひとつに、呼吸を調整する脳細胞の消失も考えられる、とする研究論文を発表した。睡眠時無呼吸症候群は、気道の閉塞で起きるが、この場合は、脳幹にある呼吸神経「preBotzinger complex (preBotC)」の細胞の消失が年を取るにつれて徐々に進み、睡眠中の呼吸停止を引き起こすのだという。
フェルドマン教授らは実験で、ネズミのpreBotCニューロンを半分以上損壊させ、その影響を調べた。ネズミは初め、寝起きに呼吸困難を起こすようになり、4〜5日後にはレム睡眠に入ると同時に完全な無呼吸状態に陥るようになったという。レム睡眠で無呼吸状態になったネズミは、起こされるまで呼吸を再開することはなかった。その後、レム睡眠時だけでなく、ノンレム睡眠や起きている時にも呼吸が一時的に停止するようになった。
寝起きに息苦しくなるのは「人間の高齢者にもよくみられる現象」(同教授)である。フェルドマン教授は今回ネズミに起きた状態が「同じ哺乳類である人間にも当てはまる可能性がある」と指摘している。
高齢者が健康上の問題がないのに睡眠中に死亡した場合、死因は心不全などとされることが多い。フェルドマン教授らは、「高齢者はもともと心肺が弱っており、全てのケースが心不全が原因とはいえない。呼吸不全を起こして死亡したケースもあると考えられる」と述べた。
パーキンソン病や、ゲーリック病(筋萎縮性側索硬化症、ALS)などの疾患の患者も睡眠中に呼吸困難を起こすことがある。フェルドマン教授らは、これについても同様に、preBotC神経の消失によるものである可能性があるとみている。
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