オスロ大学(ノルウェー)の研究チームは、成人のうつ病患者が抗うつ剤「パロセチン」の服用を続けると、服用していない患者より、自殺未遂を起こす確率が7倍も高くなる、との統計分析を発表した。詳細は、オンライン医療ジャーナル「BMC Medicine」に「Suicidal attempts in clinical trials with paroxetine randomized against placebo」として掲載された。
パロセチンはセロトニン再吸収抑制剤(SSRI)のひとつ。調査では、16件の臨床試験に参加した成人のうつ病患者約1500人がそれぞれ、パロセチンまたは偽薬のどちらかを無作為に選び、服用を続けた。試験終了後、各参加者のデータを統計学的に分析・比較したところ、自殺未遂を起こす確率は7対1の割合で、パロセチンを服用していた患者グループのほうが高かったという。自殺者はでなかった。
同大の調査結果は、英国放送協会(BBC)や有力紙ザ・タイムズが22日付の紙面などで取り上げた。BBCによれば、英国では最近、服用を継続すると自殺願望が強まる危険性があるとして、パロセチンの青少年への処方が禁じられたばかりという。オスロ大学の研究チームは、「(禁止を)成人にも広げるべきだ」と主張している。
ただ、一部のうつ病患者支援団体などのように「多くの患者に効果があったことと、自殺願望が強まる可能性のバランスをどのようにみるかだろう」として、分析結果には慎重な見方もある。
2月にも英医療専門誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)が、メーカーのデータをもとにSSRIの服用が、うつ病患者の自殺願望を強める可能性があるとする分析結果を掲載している。 |