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海外トピックス
 英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスなどから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。
掲載日: 2005.09.2
異常プリオンの血中検出に成功――米テキサス大
 米テキサス大学医学部ガルベストン校(UTMB)のチームが、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の感染を発症前に血液検査で診断する方法を開発している。このほど、PMCA(protein misfolding cyclic amplification)と呼ばれるプリオン増幅法を用いた実験で、ハムスターの血中にある異常プリオンをほぼ正確に検出することに成功したと発表した。

 プリオン増幅法とは、正常プリオンと微量の異常プリオンを試験管に入れて混合し、異常分子同士の「結合→破壊→結合」のサイクルを繰り返すことにより、異常分子の増幅を促し、発見を容易にするというもの。同チームでは4年前にこの方法を開発。結合と破壊のサイクルの回数が多ければ多いほど検出率が高まるため、このサイクルを効率的に繰り返すオートメーション化を進めてきた。

 UTMBは、この方法を使って、異常プリオンに感染したハムスター18匹の血中から異常プリオンを検出できるか調べた。その結果、16匹から異常プリオンを検出できたという(検出確率89%)。また、感染していないハムスター12匹から、異常プリオンを誤検出することはなかった。

 UTMBのチームはPMCA法のオートメーション化をさらに進め、検出の精度を上げる計画。精度が高まれば、感染した家畜を発見して食肉市場への流通を未然に防ぐこともできるうえ、発症前のヒトの感染も診断可能となる、としている。

 UTMBのクラウディオ・ソト教授は、「生化学的に血中にある異常プリオンの検出に成功したのはこれが初めて。発症前に感染を検出できれば、治療法をみつけることができるかもしれない」と述べている。

  プリオンは脳内に蓄積され、血中での検出は極めて困難とされている。現時点で、vCJD感染を確定診断する方法は、死体の脳組織から異常プリオンタンパクを検出するしかない。
<関連サイト>
テキサス大学
NCBI
First released 28 Aug 2005 @
高齢者のための抗エイズ治療法の必要性を強調−米感染症学会
 米国感染症学会(IDSA)は、近年、50歳以上のエイズウイルス(HIV)感染者が増えていることを背景に、中高年層のHIV感染者の体質に適した治療法の早期確立を訴えている。

 エイズは薬物使用や性交渉を通じて感染する「若年層の疾患」というイメージが強く、治療法も若年層の体質に合わせて開発されている。また、中高年層の場合、医師が別の疾患を疑って、無駄な検査を勧めることも少なくないという。中高年層の感染者の死亡率は、若年層より高く、早期診断が延命の重要なカギを握る。治療法の確立とともに、どの世代でも感染リスクのある疾患として医師の認識を高める必要にも迫られている。

  効果があるとされる治療法にはHAART(3剤以上の抗HIV作用のある薬剤を組み合わせた多剤併用療法)がある。しかし、これは薬剤の服用量などが若年層の体質に沿って定められており、体力の低下した中高年層は、肝臓や腎臓に障害を起こす可能性が高いという 。

 これらのことからIDSAは今後、「中高年層に適した治療法がどういったものであるのか、また、中高年層の感染者の骨密度の低下や痴呆、心臓血管関連の疾患が若年層の感染者とどのように異なるのかも調べる」(ナタリー・カソー博士)方針という。

 詳細は、臨床感染症専門誌「Clinical Infectious Diseases」9月15日号に掲載された。
<関連サイト>
米感染症学会
First released 30 Aug 2005 @
性ホルモンが疼痛の原因?−第11回世界疼痛会議
 シドニーで8月21〜26日に開かれた「第11回世界疼痛会議(the 11th World Congress on Pain)」では、性ホルモンと疼痛の関連性について活発な意見が交わされた。議論を通じて、性ホルモンの分泌量の急激な変化が疼痛の原因である可能性があるとの見方で一致。一部研究者は今後、性ホルモンと疼痛の関連性についてさらなる調査を行なうとしている。

 シエナ大学(イタリア)の生理学者、アナ・マリア・アロイジ氏は、女性ホルモンの増量による女性への性転換治療を受ける男性の間で、以前より慢性的な疼痛を感じる人が増えた、との調査報告を発表した。調査対象の54人のうち、治療中に頭痛などの疼痛を感じるようになった人は3割に増えたという。逆に、男性への性転換治療を受ける女性の場合、半数が治療前に経験していた疼痛が和らいだと答えたという。

  女性ホルモンの分泌量が急速に増える早期思春期には、女子のほうが男子よりも痛みを感じることが多い。このため、女性ホルモンの分泌量が増えると疼痛が起こるのではないかとの見方が上がったが、女性は、女性ホルモンの分泌量が最低水準にあるときに月経周期特有の疼痛を感じており、必ずしも女性ホルモンの増加が原因とは断定できない。

 これらのことから、米ワシントン大学のリンダ・ルレッシュ氏は、女性ホルモンの分泌量が急減または、急増した場合に疼痛が起こる可能性を確認したほうがよいのではないか」と指摘。「避妊薬を服用する女性を対象に女性ホルモンの増減がどのように疼痛につながるかを調査する」意向を示した。

 一方、アロイジ氏は今後、男性ホルモン分泌量の増量が男性の疼痛の感じ方にどのような変化をもたらすかを調べる計画という。
<関連サイト>
世界疼痛会議サイト
First published 25 Aug 2005 @
臨床試験中の抗がん剤が早老症候群治療に有効の可能性−米ヒトゲノム研究所
 米国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)は、白血病や神経線維腫症治療薬として臨床試験段階にある「ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTIs)」が、ハッチンソン・ギルフォード早老症候群(HGPS)の子供の治療に効果があるかもしれないとする研究報告を発表した。

  HGPSは、幼児期に身体の老化が急速に進み、成人年齢に達する前に心臓血管疾患や脳卒中などが原因で死亡する確率の高い遺伝子異常による疾患。現時点で、治療法はないとされる。1番染色体上にあるラミンA遺伝子のDNA塩基配列の突然変異によって起こるとされるが、NHGRIは、FTIsを用いて、この突然変異のプロセスを阻害できることが判明した、としている。

 報告は、全米科学アカデミー会報(PNAS)のオンライン版(8月29日付)に掲載された。
First released 29 Aug 2005 @
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