米テキサス大学医学部ガルベストン校(UTMB)のチームが、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の感染を発症前に血液検査で診断する方法を開発している。このほど、PMCA(protein misfolding cyclic amplification)と呼ばれるプリオン増幅法を用いた実験で、ハムスターの血中にある異常プリオンをほぼ正確に検出することに成功したと発表した。
プリオン増幅法とは、正常プリオンと微量の異常プリオンを試験管に入れて混合し、異常分子同士の「結合→破壊→結合」のサイクルを繰り返すことにより、異常分子の増幅を促し、発見を容易にするというもの。同チームでは4年前にこの方法を開発。結合と破壊のサイクルの回数が多ければ多いほど検出率が高まるため、このサイクルを効率的に繰り返すオートメーション化を進めてきた。
UTMBは、この方法を使って、異常プリオンに感染したハムスター18匹の血中から異常プリオンを検出できるか調べた。その結果、16匹から異常プリオンを検出できたという(検出確率89%)。また、感染していないハムスター12匹から、異常プリオンを誤検出することはなかった。
UTMBのチームはPMCA法のオートメーション化をさらに進め、検出の精度を上げる計画。精度が高まれば、感染した家畜を発見して食肉市場への流通を未然に防ぐこともできるうえ、発症前のヒトの感染も診断可能となる、としている。
UTMBのクラウディオ・ソト教授は、「生化学的に血中にある異常プリオンの検出に成功したのはこれが初めて。発症前に感染を検出できれば、治療法をみつけることができるかもしれない」と述べている。
プリオンは脳内に蓄積され、血中での検出は極めて困難とされている。現時点で、vCJD感染を確定診断する方法は、死体の脳組織から異常プリオンタンパクを検出するしかない。
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