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海外トピックス
 英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスなどから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。
掲載日: 2005.09.22
医師は医療過誤の報告を−英医療安全推進機関が呼びかけ
 英医療専門誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)によると、英医療安全推進機関(National Patient Safety Agency、NPSA)は9月半ば、医師向けの医療安全教本「Medical Error」を発行した。教本には、医療過誤のケーススタディーのほか、過誤を報告する際のアドバイス、十数人の有力な医師による体験談などを掲載。NPSAは、医療過誤の原因を突き止め、同じミスを繰り返さない体制を整備するには、報告されたケースについてオープンに話し合える環境づくりが重要とみている。教本を通じて、まずは、医師による報告を促す狙いだ。

 NPSAは教本の中で、地域ごとの窓口以外に本部でも直接報告を受け付ける体制を整えたことも伝えた。不当な扱いを受けるのを恐れて、報告をためらう医師がいることも配慮し、匿名での報告を受け付けるという。NPSAのジョン・リリマン理事は、「医療過誤についてオープンに話し合う環境が整うまで、こうした匿名報告システムは必要だろう」との見方を示している。

  医療過誤の体験談では、英国医師会(BMA)会長や全国医療協議会(General Medical Council、GMC)の会長を含む14人の医師が、過去に経験した医療過誤を自ら公表し、どのような教訓を得たかを伝えた。

 教本の発行に当たり、共同発行者である医師の弁護団体「Medical Defence Union」のリスクマネジメント責任者、スティーブン・グリーン氏は「医療過誤の多くは個人個人の医師の知識不足というよりは、作業の進め方や医療体制など構造的な問題に起因している」と指摘。「(体制を改善するためにも)実際に起きた医療過誤のケースから学ぶことは多い」として、報告の重要性を訴えた。

 BMAは、すべての若手会員に、この教本を配布したという。
<参考>
 「Medical Error」の抜粋はオンラインでも閲覧可能。
  ・http://www.saferhealthcare.org.uk/IHI/Products/Publications/MedicalError.htm
First published online 17 Sept 2005 @ BMJ.com
アジア圏で喫煙による心臓疾患は増加傾向に――豪研究所が警告
 オーストラリアのジョージ国際医療研究所(the George Institute for International Health)は、アジア太平洋諸国(オーストラリアを含む)の約60万もの人々を対象にした大規模な喫煙調査を実施した。それによると、同地域では、喫煙率が依然高い水準にあり、くも膜下出血のほか、脳梗塞や心肺血管関連の疾患を引き起こす要因になっているという。

 高い喫煙率の背景には、欧米に比べて喫煙が健康に及ぼす害についての認識が全般に低いこと、また、急な禁煙は体に悪いといった思い込みが一部にあること、さらに、女性の喫煙者が増えていることがあるとしている。

 同研究所のマーク・ウッドワード教授は、特に女性の喫煙者が増えていることに懸念を示し、「アジア太平洋圏の各国は、女性に向けたメッセージを含む禁煙キャンペーンを早急に行うべきだ」と強調した。
<関連資料>
 ・ジョージ国際医療研究所(The George Institute for International Health)
First released 20 Sept 2005 @
デジタル・マンモグラフィーの精度調査を実施−米ヴァージニア大学
 米ヴァージニア大学医療システム学部は、従来のX線を使ったマンモグラフィーとデジタル撮影によるマンモグラフィーの精度比較調査を行なった。その結果、デジタル・マンモグラフィーは、従来のX線撮影に比べて、乳腺密度の濃い女性の乳がんを発見しやすいことがわかったという。

 調査では、米国、カナダの1,300人の女性(50歳以下)を対象にマンモグラフィー検査を実施した。乳がん発見率をX線とデジタルそれぞれの撮影方法で比べたところ、ほとんどの場合、X線撮影とデジタル撮影で、乳がん発見率に差は見られなかった。しかし、乳腺密度の濃い女性の場合に限り、乳がん発見率は、デジタル・マンモグラフィーのほうが最大で28%も高かったという。

  デジタル・マンモグラフィーでは、デジタル撮影した画像をコンピューター上で強調、拡大できる。同大学では、1990年代半ばにデジタル・マンモグラフィーの利用を研究目的で開始し、2001年から臨床で利用している。
First released 19 Sept 2005 @
男性は女性より社会的な地位の変化でうつ病になりやすい?−英大学調査
 英ニューキャッスル・アポン・タイン大学は、1947年にニューキャッスル・アポン・タイン周辺で生まれた男女の病歴や意識、社会環境などの変遷を追った調査データを基に、社会的地位が以前よりも下がった場合の意識の変化が男女間で、どのように異なるかを調べた。調査対象のうち男性224人、女性283人を比べたところ、男性のほうが女性よりもはるかに高い確率でうつ症状に陥ることが分かったという。

 うつ症状のレベルは、ストレスや不安感、自殺願望など28項目について、それぞれ、どの程度強く感じているかを尋ねたアンケート調査の結果で判断した。それによると、女性は男性より感情の起伏が激しい一面を持ちながらも、社会的地位のアップダウンによる精神状態の変化はあまりみられなかったという 。一方で、男性は社会的地位が下がると、地位が上昇したときに比べて4倍もうつ症状を訴える確率が高かったという。

 同大の研究チームでは、この理由として「この世代の男性は一家の大黒柱としての意識が強く、仕事を生きがいにしている場合が多い。それだけに、仕事のキャリアに障害があった場合、ショックが大きいのではないか。逆に、女性は仕事よりも子育てや友人関係などを重視していることが多いようだ」と説明している。

 チームを率いたポール・ティフィン博士は、「この調査結果を一般論として論じることはできないが、経済環境の変化や大量リストラが、国民の家計だけでなく、精神状態を圧迫する可能性があるのだということを政府や関連機関に示唆する材料になれば幸いに思う」と述べた。
First released 14 Sept 2005 @
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