米行動神経科学センター(CBN)とジョージア州立大学、ベルギーのリージ大学の研究チームは、環境によってメスからオスへ性転換する海水魚を使って、性転換による脳や生殖腺中の女性ホルモン生成成仲介酵素「アロマターゼ」のレベルや行動パターンの影響を調べた。その結果、性転換の課程では、生殖腺に関連した変化が出る前に、脳内のアロマターゼが減少。平行して行動パターンも攻撃的になったという。
アロマターゼは、テストステロン(男性ホルモン)をエストロゲン(女性ホルモン)に転換する働きのある酵素。調査では、オスが少ないとメスが性転換して不足を補う性質を持つカタリナゴビー(bluebanded goby)を(1)オス、(2)メス、そして(3)オスに性転換しかけているメス、(3)転換オスの4つのグループに分け、それぞれの脳と生殖腺内のアロマターゼのレベルやアロマターゼの減少に伴う行動パターンの変化を調べた。
結果を比較したところ、全グループの中でアロマターゼのレベルがもっとも低かったのはオスだけのグループ。オスへの性転換途上にあるグループでは転換の進行度合いに応じてこの酵素のレベルが低かった。さらに、性転換の初期段階においては、生殖腺のアロマターゼのレベルに変化が生じる前に、脳のアロマターゼのレベルが低くなったという。
研究チームでは、これらの結果から、「性別による違いは生殖器よりも脳によって決められているといえる。人間の性別がどう決まるかについても、このことは当てはまるのではないだろうか」とみている。この調査報告は、英王立協会報誌B(Proceedings of the Royal Society B)のオンライン版に掲載された。
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