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海外トピックス
英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスなどから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。
掲載日: 2005.10.28
鳥インフルエンザ――欧州の反応と対策について
 アジアから欧州に拡大した鳥インフルエンザ感染――。英科学専門誌ネイチャーのオンラインニュース「news@nature.com」は26日、鳥インフルエンザの感染が欧州からアフリカに拡大する可能性があると報じた。

 10月にカナダのオタワで開かれた日米など30カ国が参加した国際閣僚会議では、人から人へ感染する極めて危険な新型ウイルスの出現に備え、密接な国際協力体制が不可欠との見解で一致した。しかし、途上国への治療薬の供給不安や巨額の援助の負担の解決は先送りされたままだ。

  アジアから欧州へ、そしてアフリカへとさらなる感染拡大が懸念されるなか、世界保健機関(WHO)<※1>は11月上旬、国連食糧農業機関(FAO)<※2>、世界銀行などと共同で鳥インフルエンザ対策についての国際会議を開く。途上国への援助を含め、一段の国際協調が求められそうだ。

◆欧州各国の対応◆

 域内での鳥インフルエンザ感染が確認された欧州連合(EU)では、域外からのペット用鳥類の輸入を禁じる措置を打ち出した。各国別では、イギリスが全国民一人ひとりに2度の投薬が可能なワクチンを購入する方針。また、フランス、ドイツ、ギリシャが防護マスクや抗ウイルス剤の備蓄、空港・国境付近のチェック強化などに乗り出しているほか、多くの国が感染防止のため家禽の屋外展示を禁じるなどの措置に出ている。(詳細は、下記「各国の対策」参照)

 また、米ヘラルド・トリビューン紙(27日付)が報じたところによると、全EU加盟国は24日以降、デンマークのコペンハーゲンで世界保健機関(WHO)と、人から人へ感染するウイルスの出現リスクについて分析する会合を開いている。その会合を通じて、感染拡大を防ぐための具体的な措置を定めていないのは欧州では4カ国だけであることが判明したという。各国が定めた措置は、感染の確認方法から、必要な抗ウイルス剤の分量にいたるまで詳細にわたるものが多かったという。今後は、鳥インフルエンザの大流行が起きる可能性があるとの認識に基づき、各国間の協力体制を強化することで一致した。

 英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は25日、欧州食品安全機関(Efsa)が、鳥インフルエンザウイルスの感染を避けるため、生卵の摂取を控えることや、鶏肉の調理徹底を心がけること、などの勧告書を出すと報じた。

 FTによれば、Efsaは「食事を通じて感染する可能性を否定する科学的証拠は現時点でない」として、「鳥に直接触れないこと、そして、まずは衛生的な食事を心がけることが重要だ」と強調しているという。新型ウイルスの出現スピードにあわせてヒトに効果のあるワクチンの開発が間に合わない状況下で「ワクチン頼みは不十分」との見方もあり、まずは普段の食事で心がけられることからスタートすべきだとしているという。

◆各国の対応◆
<※3>
【主要ポイント】
欧州でH5N1型感染が確認された国 : ロシア、ルーマニア、トルコ。
EUの対策 : 域外からの生きている鳥類の輸入禁止。
主な各国の対策 : 家禽や鳥類の屋外展示の禁止。抗ウイルス剤の備蓄、国境、空港でのチェック強化等。
●イギリス
10月22日、南米スリナムから輸入され、検疫中だったオウムが鳥インフルエンザに感染して死亡。
10月23日、EUに域外から生きている鳥類の輸入禁止を要請。
鳥インフルエンザが広域で流行した場合、全国民一人ひとりに2度の投薬が可能なワクチン(1億2,000万の投薬分)を購入する方針。
現時点で、英国は250万の処方件数分の抗ウイルス剤の蓄えがあり、1,460万件数分を追加発注する方針。
緊急対策計画書を作成。
●ブルガリア
ギリシャ、トルコ、ルーマニア、マケドニアからの生きている鳥類と家禽の輸入禁止。
バルカン諸国との国境付近の管理強化。
●クロアチア
東部でH5型インフルエンザ感染した白鳥の死体がみつかった後、同国からEU諸国への鳥と家禽の輸出を禁止。
死体がみつかった周辺地域では家禽の処分が行なわれている。
●フランス
湿地帯付近の21地域の農家に家禽の屋外展示を取りやめるよう要請。
ドヴィルパン首相は、年末までに2億枚の防護マスクを備え、1400万人分の抗ウイルス剤を備蓄する方針を打ち出した。
空港内での健康チェックを強化。
●ドイツ
鳥インフルエンザで死んだガチョウがH5N1型ウイルスに感染していたかどうかを確認中。
すべての家禽の屋外展示を禁止。
動物の密輸を防ぐために、国境および空港でのチェックを強化。
●ギリシャ
鳥インフルエンザの感染が確認された地域の生きている鳥類および家禽の輸出全面禁止。
21万回の投薬分の抗ウイルス剤を追加発注。
薬剤師は抗ウイルス剤などの需要増にともなう不足に備え、一部の抗ウイルス剤を病人や年配者向けに備蓄する方針。
●オランダ
ニワトリや他の種類の鳥類を屋外に出さないように国民に指示。
ロシアでの感染発見を受けて、野鳥と接触しないように家禽の屋外展示を禁止。9月に入って禁止レベルを緩和。
●ルーマニア
毒性の高いH5N1型鳥インフルエンザの感染例が発見され、周辺地域の数千人にはインフルエンザワクチンを投与。当局は経過をモニター中。
感染例が出た地域(Ceamurlia de Jos)では、数千匹の鳥類が処分され、地元住民は家禽を屋外に出さないよう指示されている。
●ロシア
ロシア政府は19日、モスクワから南へ200キロメートルのTula地域でH5N1型鳥インフルエンザの広域感染を確認し、発表。
H5N1型ウイルスの感染が確認される前の7月、鳥インフルエンザの感染がみつかったシベリアで10万匹の鳥類を処分。
●スペイン
抗ウイルス剤の発注量を当初の200万回の投薬分から1000万回分に増やした。
●トルコ
毒性の高いH5N1型鳥インフルエンザの感染を確認。
感染がみつかったトルコ西部で数千匹の鳥類を処分。
※1
・「The H5N1 agenda: setting the priorities" for avian influenza control in animals and human pandemic preparedness”」(世界保健機関、WHO)
・「Responding to the avian influenza pandemic threat - Recommended strategic action」(WHO)
※2 国連食糧農業機関(FAO)
※3 2005年10月27日時点、英国放送協会BBCのホームページ「In Depth : Bird Flu」から
鳥インフルエンザのアフリカ拡大に懸念−国連食糧農業機関(FAO)
 国連食糧農業機関(FAO)は、鳥インフルエンザの感染が中東とアフリカに拡大する可能性があることを指摘、これらの国々は早急に感染の拡大防止に備えるべきであると警告した。ロシア、カザフスタン経由でルーマニアとトルコに感染が拡大したことで、「渡り鳥が媒介しているとの見方を強めた」という。また、部族間闘争が続くソマリアなどを含む東アフリカ諸国については、統制された防止策を打ち出すことが困難であることから、国際社会による支援の必要性があることを強調した。

 FAOでは、特に、ヒトと動物が接触する機会が多く、十分な疾病管理体制が整っていない東アフリカ諸国で感染が広域にわたって拡大するのではないかと懸念している。感染が広がり、ウイルスが繁殖を繰り返した結果、人から人へ感染するウイルスが出現する可能性が高まるためだ。

 また、欧州については、来春にかけて、渡り鳥が欧州南部から北上した際に、再び感染が広がる可能性があることも指摘。監視強化と感染拡大の防止策の強化の継続を求めた。 
First released 19 Oct 2005 @ FAO
母乳に抗HIV成分?−蘭アムステルダム大学
 オランダのアムステルダム大学は、母乳に含まれるLewis X糖脂質にHIVウイルスによる免疫抑制性CD4+T細胞への感染を防ぐ働きがあるとの研究論文を「The Journal of Clinical Investigation」を通じて発表した。

 HIVウイルスはT細胞に感染する前に抗原を提示する働きのある樹状細胞に感染するとされる。研究では、この樹状細胞の表面にLewis X糖脂質を含む化合物が付着しているとHIVウイルスの感染を防ぐ効果がみられたという。研究チームのビル・パクストン氏によれば、母乳中のLewis X糖脂質を含む化合物を500倍に薄めても、この作用に変わりはなかったという。

 ただ、現実に母乳が乳児へのHIV感染を防ぐかどうかとなると疑問点が残る。HIV感染した母親から2年にわたり母乳を与えられた乳児の1〜2割がHIV感染しているとのユニセフの調査結果などがあるためだ。

  パクストン氏らは、今後、母乳のLewis X糖脂質が多く含まれるほど、母親から子供へのHIV感染率が低くなるかどうかについて調べる計画。最終的には、性行為によるHIVウイルス感染を防ぐ局所用殺ウイルス剤(microbicide)の開発につなげたい考えだ。
First published online 21 Oct 2005 @
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