ロシアの人口激減が指摘されて久しいが、英ロンドン大学インペリアル・カレッジ・タナカ・ビジネススクールは、向こう50年間で同国の人口はさらに3割減り、1億人になるとの予想を英誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)を通じて発表した。少子高齢化が進んでいることに加えて、男性を中心に非伝染病の罹患率・死亡率が高いためだ。このため、国民の平均寿命も近年になって短くなっており、現時点での平均寿命は66歳と日本に比べて16年も短いという。
非伝染病の罹患率・死亡率が高い背景には、喫煙や飲酒、不健康な食生活によって健康を損ねているケースが目立つうえ、HIVなどの性感染症やC型肝炎、既存の治療薬に耐性を持つ結核の蔓延、交通網など社会基盤の未整備による事故などが横行し、国民が健康的な生活を送る基盤が失われていることが考えられるという。
同ビジネススクールによれば、心臓疾患と糖尿病による国民の死亡で失われる経済コストだけで、2005年の国民総生産(GDP)の1%(約111億米ドル)を占める見通し。こうしたコストは今後も増加する可能性が高く、2015年には同様のコストが664億ドルとGDPの5%を占めることになるだろう、としている。
国民の平均寿命は、日本以外では、欧州連合(EU)に比べて14年、米国に比べて12年も短い。男性の死亡率が高いのが特徴で、平均寿命の男女間で14年の開きがある。ロシアが属する主要8カ国(G8)では、平均寿命の男女格差は8年であり、これよりさらに6年もの開きがあることになる。また、地域による寿命格差も顕著という。
同ビジネススクールのリファト・A・アトゥム氏は、非伝染病や事故は、国がリスク要因を除くために統制のとれた公衆衛生戦略を展開することで回避できるとして、ロシアは自国の公衆衛生基盤を早急に改革すべきであると強調した。
また、ロシアは2006年に入り、G8を務めることになっている。アトゥム氏は、ロシアの国力の安定がG8の戦略にかなうならば、G8ならびにEU加盟各国がロシアの公衆衛生基盤の改善のために支援をしていく必要も出てくるだろう、とも述べた。 |