米フロリダ州立大学の研究チームは、遺伝子転移技術を使って脳の一部の脳由来神経栄養因子(BDNF)の遺伝子発現を阻害したネズミに日常的に脅威を感じさせる実験を10日間実施したところ、通常のネズミに比べて、引きこもる傾向を示さなかったことがわかった。この調査結果は科学誌「サイエンス」(2006年2月10日号)に掲載された。
実験では、10日間にわたり、ネズミを他の攻撃的なネズミの脅威に晒し、その後の行動パターンを比較した。その結果、敗北したネズミには食欲、性欲の減退がみられ、攻撃的ではない他のネズミからもコンタクトを避け、巣の隅に引きこもる傾向が強くなったという。その後、食欲と性欲は回復したものの、引きこもりの傾向は治らなかった。しかし、BDNFの発現を阻害されたネズミにこのような傾向はみられなかった。
同大のカルロス・ボラノス助教授は「現在、使われている抗鬱剤の効果に疑いはないが、まだ理想的なものではない。今回の実験で示されたように、遺伝子技術の応用で、副作用の少ない新しいタイプの治療法の開発につなげることができるかもしれない」と述べた。
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