米イリノイ大学の研究チームは、「ARC」と呼ばれる人工化合物に、健康な細胞に影響を与えることなく、腫瘍細胞を死滅させる効果があることがわかったとする研究報告書を発表した。
実験で、肺がん細胞に2000種類の化合物を投与して効果を調べたところ、ARCを投与されたがん細胞の5〜7割が投与から24時間以内に死滅したという。一方で、健常な肺細胞は、通常より2〜4倍濃度の高いARCを投与されても、細胞分裂が阻害されたほかは、傷ついたり、死滅することはなかった。
研究チームは、このほかに乳がん、大腸がん、胃がん、肝臓がんのがん細胞でも実験。その結果、ARCは、同じようにがん細胞の死滅させる効果をみせたという。また、ARCに、がん細胞の血管新生を抑制する効果もみられた。
ARCが、どのようにして、がん細胞を死滅させるのかというメカニズムは明らかではないが、同大のガーテル助教授は「ひとつには、がん細胞は、何らかの防御効果がある分子に依存しており、ARCには、この分子を減少させる働きがあるのではないか」との見方を示した。
ガーテル助教授は、ARCが有効ながん治療薬になり得るとみて、今後は、動物を用いた実験に入り、臨床試験につなげる考えだ。
研究報告は、「Cancer Research」(2006年3月15日号)に掲載された。
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