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海外トピックス
英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスなどから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。
掲載日: 2006.03.31
孤独感と高齢者の高血圧の関連性
 米シカゴ大学は、孤独感が米国の中高年の血圧を上昇させ、卒中や心臓発作による死亡要因になる可能性がある、とする報告書「孤独感による年齢層別収縮期血圧格差の予測(Loneliness is a Unique Predictor of Age-Related Differences in Systolic Blood Pressure)」を発表した。

 研究チームは50〜68歳の中高年229人を対象に孤独を感じているかのアンケート調査を実施。同時にアンケート参加者一人ひとりの体重、アルコール摂取量、喫煙の有無、高血圧治療の薬品服用の有無、家族構成などのデータを尋ね、アンケートの集計結果とつき合わせた。その結果、自分が孤独だと感じている人の収縮期血圧は、感じていない人に比べて30mmHgも高かったという。

 世界保健機関(WHO)の血圧規準によれば、「上の血圧(収縮期血圧)140mmHg以上、下の血圧(拡張期血圧)90mmHg以上は高血圧症」とされている。つまり、収縮期血圧値の格差が30 mmHgあるということは、正常値の人(例:120mmHg)と高血圧症と診断される人(150mmHg)を比べたときと同程度の差があるということになる。

 米国立衛生研究所(NIH)の行動社会研究プログラムのディレクター、リチャード・スズマン氏は、「孤独感と血圧の相関関係がこれほどとは思わなかった。高齢者の人付き合いは家族や友人の死、病気、引越しなどで止ってしまうことがある。NIHは目標の一つとして、高齢者の孤独感を和らげ、血圧の上昇を抑えるためにも、高齢者と社会とのつながりや人付き合いを良い意味で維持できる方法を考えていきたいと思う」と述べた。

 ジョン・カシオッポ教授は、「孤独を感じる人は、ストレスを感じる状況に置かれると、乗り切ろうという気持ちよりも、恐怖を感じ、あがいたり、閉じこもったりする傾向にある」と分析、今後、孤独がどのようにして血圧の上昇につながるのかを調べる計画という。
First released 28 March 2006 @
同性愛患者の診療心得書を発行−米ピッツバーグ大学
 米ピッツバーグ大学の研究チームは、ゲイやレズビアンなどの同性愛嗜好者や性転換手術を受けた人などを診療する際に医療提供者が留意する点についてまとめた心得書「The Handbook of Lesbian, Gay, Bisexual, and Transgender Public Health: A Practitioner's Guide to Service」を発行した。

 この心得書では、同性愛の患者が医療サービスで受ける差別(酷い場合は診療そのものを拒否される場合がある)や、生殖器系のガン発生率が高いこと、医師が個人の生活様式よりも性別によって疾患のリスク要因を捉えがちであるといった指摘、医療情報の秘匿性に関する問題点などに医師が実際に診療を行なううえで留意すべき点をまとめた。

 研究者のマイケル・D・シャンクル氏は中でも「同性愛の女性が定期検査を避けがちで、生殖器系のガンがかなり進んでから、受診する傾向にある」点について懸念を示し、「差別が受診抑制につながり、十分な検査を受けずに疾患を悪化させる患者が多いことを忘れてはならない」と強調した。

 「米国で、同性愛者というと少数派で、疾患といえばエイズなどの性感染症を結び付けて考えられがちだ。しかし、実際には人数は考えられている以上に多く、問題も複雑だ。公衆衛生上の観点からも同性愛者特有の問題に対処する体制を整える必要がある」という。
First released 27 March 2006 @
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