家庭内暴力による負傷で、救急外来に駆け込むケースは多いとみられるが、処置に当たった医師が、患者が家庭内暴力の被害者であると見分けるのは難しいとされる。時間的な制約があるなかで、担当医が家庭内暴力という込み入った問題について患者と話す機会がないこと、そして、患者側も尋ねられない限りは家庭内暴力について話さないことが多いためだ。
米ペンシルベニア大学の研究チームは、パソコン上で家庭内暴力について尋ねるアンケートを行い、その結果に基づいて問診するスクリーニングを行ってからのほうが、通常の診療より患者が家庭内暴力の被害にあっているかどうか見分けやすい、との調査結果を発表した。パソコンの画面上でアンケートを行うのは、筆記アンケートや医師が面と向かって質問するよりも、込み入った問題についての回答が得やすい、との過去の調査結果に基づく。
調査は、19ヶ月の間に、都市部と郊外それぞれ一箇所の救急外来を訪れた患者を対象に実施。無作為に選出した合計903人の患者を対象に、スクリーニングを実施したグループとそうでないグループで、家庭内暴力について医師に話す確率がどの程度違うかを比べた。その結果、スクリーニングを受けた患者グループのほうがないグループに比べて2倍の確率で家庭内暴力について話し出すことが多かったという。また、調査対象にした都市部、郊外の救急外来ともに患者の20%以上が家庭内暴力を受けている可能性が示唆されたという。
スクリーニングをしたからといって、必ずしも家庭内暴力の被害者であると確定できるわけではないが、調査を率いたカリン・ローズ医師は「この調査により、患者が家庭内暴力について話しにくい医療体制にあることがわかった。こうしたスクリーニングが家庭内暴力があるかどうかの判断をしやすくするのであれば、医師も家庭内暴力を受けている患者の対応方法について追加的なトレーニングを受ける必要があるかもしれない」と述べた。
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