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海外トピックス
英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスなどから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。
掲載日: 2006.06.30
手ぬるい米食品医薬品局(FDA)の審査−米民主党議員が批判
 米下院改革委員会のヘンリー・A・ワックスマン民主党議員らは6月26日、ブッシュ政権下で米食品医薬品局(FDA)によるメーカーの違反行為に対する審査が手ぬるくなっている、と指摘する報告書を発表した。FDAをめぐっては昨年、事後避妊薬を医師の処方箋なしで販売するための認可を遅らせたことが社会問題化、その独立性を問われる事態となった。今回、審査の甘さが指摘されたことで、FDAの信頼性はさらに厳しく問われることになりそうだ。

 報告書「Prescription for Harm : The Decline in FDA Enforcement Activity」によると、2000年には1,154件あった警告書は、2005年には535件と半分近くに落ち込んだという。これは、過去15年で最低の水準。さらに、FDAの現地調査員が、死亡者を出すほどの違反を認めて本局に捜査依頼を出しても、拒否された事例も複数示された。

 FDAをめぐっては昨年9月、事後避妊薬(モーニングアフター・ピル)「プランB」を医師の処方箋なしに店頭販売できる認可を無期限に延期したことに抗議してFDAの女性幹部が辞任、ヒラリー・クリントン上院議員もFDAの独立性に疑問を呈するなど保守派、中絶反対派、リベラル派を巻き込む政治論争に発展した。この流れの中で、レスター・M・クローフォード前長官も突然辞任し、ブッシュ大統領が急遽、暫定長官としてアンドリュー・フォン・エッシェンバッハ氏を充てなければならない事態となった。

 こうした経緯から、一般の国民のFDAに対する見方も厳しくなっている。米ウォール・ストリート・ジャーナル・オンラインと調査会社ハリス・インタラクティブが5月に米国の成人を対象に行ったアンケート調査によると(実施期間5月12〜16日、回答者2,371人)、FDAによる新薬認可をめぐる判断を「優良」と評価した人の割合は36%と、2004年の56%から20ポイントも低下した。

 また、大半の回答者が薬品の安全性や効果を見極めるうえでも、FDAの審査基準に独立性を強く求めるとしているのに対し、実際には、「(審査は)医療科学的見地よりも、政治に左右されている」と感じている回答者は8割強に上ったという。

 米ワシントン・ポスト紙によると、FDA側はワックスマン議員らの報告書に対して「審査の厳しさは数で示すものではない。より危険性の高い案件に審査努力を集中しており、違反の抑止力を強めている」と反論。上院で検討されているFDAの審査見直し案を含め、FDAのあり方についての論議は当面続く可能性が高いといえそうだ。
プレスリリース
経頭蓋的磁気刺激法(TMS)が片頭痛緩和に効果
 米オハイオ州立大学の研究チームは、鬱病治療に使用される場合がある経頭蓋的磁気刺激法(TMS)で片頭痛治療に効果があるとする研究論文を発表した。実際にTMSで磁気を後頭部に照射した患者を、磁気を照射していると思わせただけの患者と事後経過を比較する実験を行なったところ、磁気を照射した患者の片頭痛が緩和する確率が、磁気を照射したと思わせただけの患者に比べて大幅に高かったという。

 実験は、同大学の医療センターを訪れた偏頭痛患者43人を対象に実施した。対象者は全員、片頭痛の前兆として視界にちかちかした光(閃輝)が現れるなどの症状があった。このうち、約半数の後頭部に2時間にわたり磁気を照射、残りの患者には同じ長さの時間、磁気を照射していると思わせ、実際には照射しなかった。

 その後、「片頭痛が緩和された」または、「完全に解消された」と返答した人の割合を調べたところ、磁気を照射した患者7割に対し、磁気を照射しなかった患者の場合は5割に満たなかった。片頭痛の場合、偽薬を用いても痛みが解消される確率が高いとされ、これほどの格差は出ないとされる。

 カナダのマックマスター大学でも同様に、TMSが片頭痛の治療に高い効果があることが認められる実験結果が出ており、同大のエイドリアン・アプトン氏らは、オハイオ州立大のユセフ・モハンマド氏らと、ヘアドライヤー程度の大きさの携帯型TMS機を開発、全米各地で実験対象者を160人に増やして臨床試験を行なう計画だ。

 片頭痛治療薬には、異常に拡張した血管を収縮させる効果がある専門薬「トリプタン」があるが、人によっては効果がないか、心臓発作などの副作用があるとされる。モハンマド氏らは、TMSがどのようにして片頭痛を緩和するかは不明だとしているが、TMSの磁気が片頭痛の前兆を起こす原因とされるニューロンの興奮を抑え、頭痛を抑えるとみている。
First published online 22 June2006 @
ワインでくつろぐのは睡眠ホルモンのおかげ?−伊ミラノ大学
 「ネッビオーロ」、「メルロー」、「カベルネソーヴィニョン」、「サンジョヴェーゼ」、「クロアチナ」――。これらの赤ワインの原料となるブドウの皮には、睡眠ホルモン「メラトニン」が高いレベルで含まれ、睡眠を促す働きがある――というイタリアの科学者たちの研究論文が『Journal of the Science of Food and Agriculture』に掲載された。

 メラトニンは主に夜間、ヒトの脳の松果体から分泌されて、睡眠を促すホルモン。最近まで哺乳類のみが生成すると考えられていたが、近年、植物からも発見されるようになった。研究を行ったミラノ大学のイリティ・マルチェロ氏は「ワインに含まれるメラトニンが、哺乳類の松果体から分泌されるメラトニンと同じようにサーカディアンリズム(睡眠と覚醒のリズム)を調整する可能性がある」とし、「なぜ多くの人が一日の仕事を終えたあとの夜に、酒を飲み、くつろぐのかが説明できるかもしれない」と述べた。

 メラトニンは、抗酸化作用があると考えられているほか、マルチェロ氏らの研究では、病害抵抗性誘導剤「ベンゾチアジアゾール」を塗布したブドウのメラトニン含有量が増加することもわかった。

 しかし、米マサチューセッツ工科大学の脳・認知科学部のリチャード・ワルトマン氏のように「その化合物がメラトニンなのか、それに似た化合物なのかについてはさらに研究が必要だ」との指摘もある。
First released 16 June 2006
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