中国で2004年に起きたポリオのアウトブレークの原因が、ポリオの生ワクチンであることが分かったとする調査論文が「The Journal of Infectious Diseases」9月1日付号に掲載された。予防接種を受けていなかった子供が生ワクチンと同型のウイルスに感染したという。生ワクチンによるアウトブレークとしては5つ目のケース。
北京などにいる中国の研究グループが行なった調査によれば、貴州省でポリオ症状を起こした7人の子供のうち6人から検出されたポリオウイルスが予防接種に使われている生ワクチンと同型(タイプ1)であったという。残る1人から検出されたウイルスはタイプ1とは同じではなかったが、その子供はタイプ1のウイルスに感染してもおかしくない環境で生活していたという。7人の子供たちが生活する周辺地域の予防接種率は72%と低く、ポリオ症状を起こした7人とも予防接種を受けていなかった。
検出されたウイルスは、1年という短い期間で、感染しやすく、麻痺症状を起こすものに変異したこともわかった。これを受けて、同省や周辺地域で、直ちに5歳以下の子供の予防接種キャンペーンを徹底させたところ、同型のウイルス株は周辺地域でみられなくなったという。
生ワクチンは、病原性がほとんどないポリオウイルス(弱毒ウイルス)をワクチンとして飲ませることで免疫をつくり、自然のポリオウイルスの侵入を防ぐ。しかし、生ワクチン接種を受けた人が副作用でポリオ症状を起こしたり、接種を受けた人から排出されたウイルスに感染する場合がある。
この調査論文について、米国疾病予防管理センター(CDC)の関係者は、「貴州省のケースは生ワクチンから派生したウイルス株が、予防接種率の低い地域でアウトブレークを起こす可能性を示したが、封じ込めることも可能であることが確認された」とコメントしている。こうした副作用やリスクを抑えるため、世界保健機関(WHO)は、生ワクチンの使用停止を推進する方針を打ち出しているが、CDCのオレン・キュー博士は「生ワクチンのような副作用のない不活化ワクチンへの完全移行には、多大なコストがかかる。予防接種に係る方針を定める際には、医療の観点からだけでなく、その国の財政的な側面も考慮しなければならないだろう」と強調した。
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