家禽類の集団へのワクチン接種率が95%に満たない場合、危険性の高いH5N1型のような鳥インフルエンザの流行を逆に促す可能性がある、という研究がネイチャーに発表された。この研究を行った英エディンバラ大学とウォーリック大学の研究者らによれば、現在使用できるワクチンは一羽一羽の家禽に効果はあるものの、集団の場合、ほぼ全ての家禽に対するワクチン接種を徹底していなければ、感染は逆に広がりやすくなるという。ワクチンを接種した家禽が混じっていると死亡する家禽が少なく、鳥インフルエンザに感染している家禽がいても気付くまでに時間がかかるためだ。
気付かぬうちに感染が拡大する現象は「silent spread」と呼ばれる。今回の研究結果から、silent spreadを防ぐためにも、集団の95%以上にワクチンを接種する必要があるという。しかし1つの家禽の集団の90%以上にワクチンを接種することは難しく、実際の接種率が90%を大きく下回るケースがほとんどだ。
感染の早期発見のために、ワクチン接種を受けていない鳥を家禽の集団の中に混在させる方法も考えられる。ワクチン接種をしていない鳥を観察することにより、集団全体のワクチン接種率に関係なく、鳥インフルエンザの早期発見が可能になるためだ。
エディンバラ大学のニック・サヴィル博士は「ワクチンの接種は徹底させなければ状況を悪くするだけだ。また、ワクチン接種は、生物安全保障(biosecurity)の観点や、調査と診断、教育、そして感染した鳥の移動制限と処分などを含む包括的な戦略の一環として行なわれるべきだ」と強調した。
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