オーストラリアのジョージ国際健康研究所は、オーストラリア及びニュージーランドの整形外科センターと共同で、人工股関節置換術後に消炎鎮痛薬の使用を漫然と続けるだけでは、十分な効果が見られないだけではなく、消化管出血などの合併症を引き起こす可能性もある、とする研究結果を発表した。
整形外科医は、手術直後の異所性骨化予防や疼痛コントロールのために、消炎鎮痛薬を処方する場合が多い。異所性骨化とは、手術後の股関節周囲の軟部組織に異常な骨形成を来たすことで、人工股関節手術後の患者の約3分の1に発生していると言われている。
研究では、オーストラリア及びニュージーランドの20の整形外科手術センターの患者900人強を消炎鎮痛薬のイブプロフェンを術直後2週間にわたって使用するグループ(約450人)と使用しないグループ(同)に分け、イブプロフェンの効果やリスクの可能性を調べた。
調査では、イブプロフェンを使用した場合、半年後、あるいは1年後の異所性骨化は大幅に減少したことが確認された。しかし、使用していない場合と比べて、疼痛や身体的な障害に対する効果がそれほどなく、消化管出血などの合併症が増えたことも判明したという。
研究責任者のフランセン博士は「今回の結果から言えるのは、人工股関節置換術後に漫然と消炎鎮痛薬を使用するべきではないということだ。臨床上、必要性があると判断されたものではなく、根拠もなしに整形外科の手術後に消炎鎮痛薬を使用すると、効果があるどころか、患者に害を与える可能性がある」と警告した。
この研究結果は、『the British Medical Journal』に掲載された。
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