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医療機器メカトロニクス
病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第1回 『AED(自動対外式徐細動器)』  
最終連載 ― 「心肺蘇生に対する世界と日本の動き」
(掲載日: 2007.03.02)
<< 連載4 「AEDだけで救命できるのか」  
 前「連載4」までは、身近になったAEDを、私たち一般市民が使用して救命活動を行う重要性についてお話してきました。

 最後に、世界と日本における心肺蘇生の状況を見ていきたいと思います。

どういった団体が心肺蘇生の流れを作っているか
BLSやALS(Advanced Life Support:二次救命処置)のガイドラインはどのように策定されているか
  、などについてです。

 医療従事者以外の方は、興味がなければ読み飛ばしていただいても大丈夫です。

 医療従事者の方にとっては、どこで心肺蘇生法に関する講習を受ければよいか、ALSやACLS、ICLSといった用語などを知る参考になると思います。

1.心肺蘇生法の沿革

 現在の医学では、科学的根拠に基づいた治療法(Evidence based Medicine:EBM)を行うことが求められています。心肺蘇生法も例外ではありません。

 まず、世界における心肺蘇生の沿革について述べていきます。

(1) 世界におけるガイドラインの確立と変遷

●1974年
 AHA(American Heart Association:米国心臓協会)は、JAMA(The Journal of the American Medical Association)にデータと実践に基づく蘇生法を発表。以後、蘇生法のガイドラインを6年ごとに発表。

●1992年
 AHAのガイドラインを踏まえ、全世界に共通する蘇生法の基本を作るためにILCOR(International Liaison Committee On Resuscitation:国際蘇生連絡協議会)が設立。

●2000年
 ILCORは、AHAとの共同作業により、『心肺蘇生法国際ガイドライン2000』を出版。

●2005年11月
 ILCORが、心肺蘇生に関わる科学的根拠と治療勧告コンセンサス(CoSTR:Consensus on Science With Treatment Recommendations)を発表。 これに基づいて、AHAは新しく『国際ガイドライン2005 』を策定、発表。

(2) 日本における心肺蘇生法普及への取り組み

 もちろん日本国内でも蘇生法の標準化と普及を目指す動きがあります(図8)。

日本における心肺組成普及への取り組み(組織図)

 日本国内の動向を知るには、「日本救急医療財団」のホームページを見て頂くとよいと思います。

 日本救急医療財団の中に設置された「心肺蘇生法委員会」が、日本における心肺蘇生法のガイドラインを制定しています。消防や日本赤十字社の救命手当講習は、このガイドラインに沿って行われています。

 また、心肺蘇生法委員会の内部委員会として国内関係学会が協力し「日本版救急蘇生ガイドライン策定小委員会」を2005年9月に発足し、CoSTR2005を受けた新しいガイドラインの策定に向けて活動しています。

 またその他に大事な団体として「日本蘇生協議会(JRC:Japan Resuscitation Council)」や「日本ACLS協会」があります。

 JRCはもともと、日本救急医療財団心肺蘇生法委員会の内部に2000年2月に設置され渉外活動を担当していましたが、ILCOR加盟のための団体として2001年7月に正式に独立し、現在は様々な活動を行っています。なかでも特筆すべき活動は、AHAの日本部会としての契約を締結し、AHA書籍の翻訳と出版を行い、AHAのガイドラインに準拠した心肺蘇生法(BLSおよびACLS)の普及を行っていることです。

 AHA準拠のトレーニングプログラムの企画および運営についてですが、これはJRCが直接行っているわけではなく、NPO法人である日本ACLS協会がJRCに委託されて行っています。

◆ホームページ一覧◆
日本救急医療財団 / http://www.qqzaidan.jp/index.html
 心肺蘇生法委員会、日本版救急蘇生ガイドライン策定小委員会のHPはここからアクセス可能
日本蘇生協議会 / http://jrc.umin.ac.jp/
日本ACLS協会 / http://acls.jp/info/acls_info01.html
ICLS / http://www.icls-web.com/icls/icls_about.html

(3)「二次救命処置」を指すいろいろな呼称

●ACLS (Advanced Cardiovascular Life Support)
AHAが提唱している、救急医療従事者の間ではよく知られた用語です。

●ALS (Advanced Life Support)
日本版ガイドライン策定小委員会が定義した用語です。

●ICLS (Immediate Cardiac Life Support)
日本救急医学会が行っている、心肺蘇生の講習会の名称です。


■おわりに

 以上、AEDと蘇生法について書き進めてきました。

 心肺停止患者の救命には、初期の数分間が非常に大事です。それは医療従事者だけで行えるものではありません。

 救命率を上げるための研究は、日々世界中で進められています。これら研究の成果を社会に還元し、システムとして運用していく試みのひとつが、2004年のAEDに関する法改正です。

 今後、AEDや救命処置について学ぶ方が増え、多くの方の命が救われることを願ってこの連載を終わりたいと思います。

◆参考文献◆
岡田和夫,美濃部嶢(監修):BLSヘルスケアプロバイダー(日本語版).American Heart Association, Inc., Texas, U. S. A., 2004.
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