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病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第5回
『MRI(核磁気共鳴画像法)』
最終連載 ― 「CTとの比較でみるMRIの特徴」
(掲載日: 2007.07.06)
<< 連載4 「MRIの仕組み」
1. MRIの長所
(1)軟部組織のコントラスト分解能が優れている
血液・脂肪の同定が可能で、骨以外の軟部組織の状態がよく分かります。
整形外科で言えば、レントゲンは骨を見るための検査なので、それ以外の筋肉や腱といったものはそこにあることはなんとなく分かりますが、その状態までは分かりません。X線を使用するCTも同様です。
しかしMRIは、筋肉や腱の状態を見ることを可能にします。肉離れやアキレス腱断裂などもすぐに分かりますし、脊椎の椎間板や脊髄などの状態も非常にはっきりと分かります。整形外科において、診断には欠かすことのできない検査です。
また、脳梗塞は初期の場合、CTでは病変をとらえることができませんが、MRIはそれが可能です。
(2)現在までの報告では無侵襲(放射線被ばくがない)
X線を使用するCTでは被ばくの問題がありますが、今までのところ磁気を利用したMRIで体への重大な影響が起きたという報告は、はっきりとしたものはありません。
(3)骨による信号の影響(アーチファクト)が少ない
MRIは骨による影響をあまり受けませんが、CTは骨による影響を受けます。
骨に囲まれた骨盤内や脳底部の撮影にMRIは適しています。逆に、骨を見るならCTのほうが優れています。CTは、関節を含む複雑な骨折の診断や治療方針決定に威力を発揮します。
2.MRIの短所
(1)撮影時間が長い
CTは数十秒ですが、MRIは数十分かかります。乳幼児や認知症の老人では、検査が困難です。
筆者の経験では、腰痛の強い方で、同じ姿勢を長時間とることができずにMRIの撮影を途中であきらめたことがあります。閉所恐怖症の人も、狭い筒の中に数十分いることが難しいため、検査は困難です。
(2)金属への影響がある
人体に使われる多くの金属は、1.5テスラ以下の磁場での検査では安全です。
検査室の磁場の中で、動いて人体を傷つける可能性があるのは強磁性体のうちの一部ですが、重篤な結果になることもあります。
例えば、脳動脈瘤のクリップ、心臓ペースメーカー、人工内耳、眼窩内の金属異物などです。日本ではまずありませんが、アメリカでは弾丸や砲弾の破片が目の中に残っている場合もあり、注意が必要です。脳動脈瘤のクリップが移動し脳出血で死亡した例、また板金工の方が失明した例も報告されています。
整形外科で使用される人工関節や髄内釘やプレートは骨の中にしっかりと埋め込まれているため、MRI撮影の禁忌とはなりません。義歯の大多数も安全です。しかし、渦電流の発生により発熱や熱傷の原因となることがあり、留意する必要はあります。
最近では、若い方でタトゥー(刺青)をしている人もいますが、刺青の色素に含まれる鉄分などにより、局所の腫脹、発赤などの熱傷をきたすこともあります。
(3)胎児への安全性は確認されていない
安全性は確認されていませんが、胎児に悪影響を及ぼすという証拠もない状況です。基本的に、妊婦に対しては検査を施行しませんが、どうしても治療上必要な場合には、インフォームド・コンセントを行って実施することもあります。しかし、CTなどX線を使用する検査における被ばくの影響のほうが大きいと思われます。
3.CTとMRIの使い分け
ざっとした印象で言えば、肺や肝臓を含む腹腔内臓器は、呼吸やぜん動運動の影響があるため、撮影時間の短いCTを用いて検査を行うことが多いです。
一方で、子宮や卵巣などの婦人科疾患、筋肉・腱・骨軟部腫瘍などの整形外科疾患、脳梗塞などはMRIを使用します。
整形外科医である筆者からすると、MRIは椎間板ヘルニア、膝の靭帯断裂などの診断に必須の日常的な検査です。病院でも、MRI検査の多くは、脳MRIと整形外科疾患が占めています。
■おわりに
MRIは、難しい理論からなる検査で、筆者も理解しきれない部分が多いのが正直なところです(今後も勉強していく予定です)。T1・T2強調、さまざまな撮影法など、この連載では触れていない部分も多くありますが、皆さんの勉強の助けになれば幸いです。
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