自由な立場で意見表明を
先見創意の会

我々をコロナから守るのは新鮮な空気である

外岡立人 元小樽市保健所長、医学博士

ワクチン接種だけで新型コロナを封じることができるだろうか。
次々と現れる変異ウイルスによる国盗り物語が始まっているというのに。

コロナウイルスは人の体内で増える。そして周囲の人に感染してゆく。それは空気を媒介にして感染してゆくと言っても過言ではない。目に見える蚊とか、飛沫物を媒介にするのではない。
飛沫や唾液が感染者の口腔から飛び散る際に発生するジェット気流。そこで発生したエアロゾル化したウイルスを含む微小粒子が、ウイルスを媒介するのである。

感染者が咳、クシャミ、唾液などで飛沫物を周辺に散布する。それらはせいぜい1~2メートル周辺に落下する。しかしそこで同時に発生したエアロゾルが、周辺の空気の流れに乗り、空気中を漂いだす。

空気の流れが全くない室内空間では、数時間はエアロゾル中のウイルスは活性化したまま存在するようだ。エアロゾルは通常3~5μm(ミクロン)以下であるが、コロナウイルスの粒子は0.1ミクロンなので、通常のマスクでは補足されない。(1/1000mm=1μm)。

因みに説明を付け加えると、マスクはせいぜい5ミクロン以上の粒子が相手だ。自分の気道や口腔からの大きな飛沫が、外部に飛散するのを防ぐ効果はある。

ウイルスを含んだエアロゾルを自分の周辺から除去するためにはどうしたら良いであろうか。周辺の空気を新鮮な空気と入れ替えなければならない。いわゆる換気である。
しかし、いつ感染している人(特に3割以上はいるとされる無症状感染者や軽症感染者)からエアロゾル化したウイルスが、周辺の空気に紛れ込んで来るか予知できない環境内では、持続的換気が必要となる。
持続的換気の目的は、人が多数存在する場所に酸素を補給し、炭酸ガスを追い出すことだけではなく、ウイルスを媒介する空気を追い出すことでもある。

生きるためには、自然とそれを育む新鮮な空気と太陽が必要だ。
それらが一つでも欠けるとコロナウイルスは容易に人の生活圏に侵入してくる。
コロナウイルスの宿主は密林の中のコウモリたちだ。SARSもMERSも密林の中からやってきた。開発で密林の中からコウモリたちが追い出されてきたのだ。

空気が媒介するウイルスは手強い。
我々にはウイルスで汚れた空気は見えない。
そのためには、周辺にいる人々と、互いに呼吸する空気を共有しないことが原則となる。
それには新鮮な空気が絶えず流れている環境が重要だ。

日本の広い庭のある古民家と現代の超高層マンション。
どちらが心身の健康を守ってくれるだろうか。
最近、そんなことを考える。

日本の古民家では、新鮮な空気は絶えず緑の多い庭から流れてくる。
数人で広い和室で長時間くつろいでいても、呼吸する空気を共有することはない。
日本の古民家では、空気中のコロナの心配をする必要はないのである。
  
新型コロナウイルスからは、どんどん変異株が出来てくる。次にどの遺伝子が変異するかは予知できない。
流行の状況が変化することで、変異ウイルスが増えてきていることが認識され、そして分離されたウイルスの遺伝子分析が行われる。

より危険な変異ウイルスが現れてくる確率は決して低くはない。
現れてきてからワクチンを慌てて作製するか、それとも万能コロナワクチンなるものを開発するか、それともコロナウイルスに対する特効薬を開発するか等、色々な対策は考えられる。
しかしいずれも簡単ではない。開発までの期間も長いし、簡単に成功するとは限らない。
現在ワクチン接種を競うように受けている高齢者たちが、生きている間には成功する確率は低いかもしれない。

やはり正当な対策は、我々が肺に吸いこむ空気を他の人々と共有しないことだろう。一定空間に淀んでいる空気を他の見知らぬ人々と共有することで、コロナウイルス感染の危険性が発生する。
空気は地球の周りに大気の下層に無尽蔵に存在している。
そこで自分だけの空気を吸うことは、決して難しいことではない。

自分だけの空気を吸うこと。
それが変異を繰り返し、われわれ人間に空気を媒介として挑戦してくる新型コロナウイルスと接触しない原則である。

自分や愛する家族の周辺を新鮮な大気から届くエアーカーテンで包もう。そしてウイルスを媒介する汚れた空気を追い払おう。

我々はどのような対策をこれから見つけるのだろうか。
それは新しい生活様式でもあるが、まさしく ウィズコロナの世界でもある。
その世界では、自然や太陽光線を大切にし、そしていつも新鮮な空気が我々の周りを包んでいる。

マスクを外し、そして大声で語ろうではないか。
それは自然に帰ることでもある。

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外岡立人(元小樽市保健所長、医学博士)

◇◇外岡立人氏の掲載済コラム◇◇
◆「コロナ日記」【2021.1.26掲載】
◆「鳥の歌」【2020.9.29掲載】
◆「新型コロナ 続々報」【2020年5月26日掲載】

☞それ以前のコラムはこちらから

2021.05.25