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社団医療法人のガバナンス

竹原将人 (税理士)

1.はじめに

医療法人は社員・理事で構成される社員総会・理事会の決議により運営される。通常の運営のみならず、親族内承継や第三者承継を考える上でも、社員・理事構成(以下「ガバナンス」)をどのような形にするかは、その後の法人運営に大きな影響を及ぼすため重要な論点といえる。

現存する医療法人57,141法人のうち、社団医療法人は56,774法人と大多数を占めている(令和4年3月31日時点)ことから、本稿では、社団医療法人のガバナンスについて解説する。

2.社員総会と理事会の関係性

(1)相違点
社団医療法人の最高意思決定機関として社員総会がある。社員総会は理事・監事の選任権を有し、予算や決算の承認、定款変更、合併や分割といった重要事項について決議する。

一方、理事会とは、医療法人の業務執行に関する意思決定機関であり、医療法人の業務を決定し、理事の職務執行を監督し、理事長を選出及び解職する権限を有する。

(2)議決権と出資持分の有無
出資持分の有無にかかわらず、社員総会、理事会いずれも構成員それぞれが1人1票を有するため、いずれの法人形態であっても同じ運営になる。なお、議長は賛否が同数の場合にしか議決に参加できないため留意が必要である。社員総会の議長は社員総会にて選任し、理事会の議長は理事長がなることとされている。

(3)開催時期・方法
①社員総会
社員総会は定時社員総会と臨時社員総会の2種類がある。定時社員総会については、医療法上最低年1回の開催が規定されているが、モデル定款では予算決定と決算承認のため年2回の開催が規定されている。

臨時社員総会は、理事長が必要と認めた時はいつでも招集できるほか、総社員の5分の1以上の社員から社員総会の目的である事項を示して招集を請求された場合にも開催される。なお、定款でこの5分の1以下の割合を定めることもできる。

②理事会
理事会は原則として3ヶ月に1回以上開催し、理事長は職務執行に対する監督の実効性を確保するため、自己の職務執行の状況を報告しなければならないとされている。

ただし、定款で理事長の自己の職務執行の状況の報告については、例外として、毎事業年度4ヶ月を超える間隔で2回以上報告する旨を定めれば、理事会の開催は年2回でも可能とされている。

理事会の招集は、定款や理事会で招集する理事を定めている場合を除き、各理事が行う。 理事会の開催にあたっては、原則として、理事会の日の1週間前(定款で1週間を下回る期間を定めることも可能)までに、各理事及び各監事に対してその通知をする必要があるが、理事及び監事の全員の同意があるときは、招集の手続きを経ることなく開催できる。

(4)決議事項
 社員総会及び理事会の主な決議事項は下表の通りである。なお、理事会の決議において、特別の利害関係を有する者は決議に参加できないこととされているが、これは以前に存在した特別代理人制度に代わり設けられたものである。

3.おわりに

 社員総会と理事会が担う役割はそれぞれ異なることから、その違いを理解した上でガバナンスを決定する必要がある。特に、社員総会において法人の重要事項が決議され、社員や理事、監事は社員総会で選任されることから、社員構成の決定については慎重な検討をされたい。

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竹原将人(税理士)

◇◇竹原将人氏の掲載済コラム◇◇
◆「出資持分評価と持分移転のタイミング」【2022.7.5掲載】
◆「MS法人」【2022.4.5掲載】
◆「令和4年度税制改正要望」【2021.11.16掲載】
◆「認定医療法人制度の実務上の留意点」【2021.8.17掲載】

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2022.11.01