どうする日本の政治家さん?
岡光序治 (会社経営、元厚生省勤務)
EUは、その首脳会議において、ウクライナの加盟交渉入りを決めた、と報じられた(2023.12.14)。ウクライナがEUに加盟することになると、ウクライナ戦争は、いよいよ、EUとロシアの直接対決のフェーズに移ることになる。
戦争とは、クラウゼビィツの「戦争論」によれば、「別の手段による政治の延長である」ということだが、エネルギー・食料などの政治的要因をめぐる両者の直接的・本格的政治対決が始まることになるのだろうか?
戦争を均衡や対話の破綻と回復という構図で考えると、戦争をひたすら悪と断罪し、平和を訴えるだけでは戦争はなくならないことは明らかである。競争のない平等社会作りを指向する感覚や観念では、平和と秩序の安定は保障されない。
<イスラム・テロリズムなどの社会運動は起こるべくして起きている>
2025年世界人口は85億人、うち、65億人が貧しい国に住むと予想されている。そのかなりの部分は、中東や南アジアなどのイスラム世界に存在している。世界的政治課題である人口、貧困、環境問題がこれらの地に集約している。だから、これらの地がテロリズムなどの過激な社会運動の温床となるのはそれなりの理由があると言えよう。
イスラムの動向はいずれの国の指導者にとっても無視できない要因となってきた。過激な社会運動をなくするには、世界規模で人口、貧困、環境問題に正面から立ち向かい、それぞれの地域の特質も考慮に入れながら、解決の道筋を探し、段階的な解決を目指していくしか道はないのではないか?
<徹底した能力主義社会は社会的結束を揺るがす危険性がある>
“Winner takes all”システムには、わずかな能力差が途方もない収入格差を生み、深刻な結果不平等をもたらし、健全な中間層をなくし、社会的結束を揺るがす危険性がある。
・一握りの「できる子」を除けば、ほとんどの子は「できない子」である事実を親を含め社会的に認める。
・しかし、「できない子」の心情を起点に置いた“競争のない平等主義”は、他者に対する「そねみ」と「ねたみ」と悪平等のカルチャーを生み出すだけで、自己責任の欠如となり、結果として、特権的なエリートと無気力な民衆への二極分化となる(ロシアがそのいい例だという人もいる。)。こうした平等主義は採ってはならない。
・教育が大きなポイントとなる。
(1) 自他の力量を冷静かつ謙虚に比較し、考え、自己の足りないところを他者に学ぶ、というこころの姿勢を身につけさせる。(偉人伝を読み学ぶことから始める)
(2) 努力と才覚で将来の試練に立ち向かう自信を子どものころに身につけさせる。
(3) どんな「できない子」にもその子特有の「できる部分」はあり、その「できる部分」の自己発見を後押しし、自分の努力でできる部分を伸ばす意欲を培い、伸ばす手助けをし実現につなげるシステムを社会的に作る。
(4) AIにベースを作らせ、自己に特有のできる部分を上乗せするイメージで教育環境を整えるといい。
<ひと作りを政治の基本に据えるべき>
人は品格がすべて。
当事者意識を持ち、大変な時に逃げない人物を作る。
政治家になりたいのなら、我を抑え、仁を尊び、義を貫き、恕の思いやりを持ち、世のため人のために実践できる人でなければならない。
政治家を志すなら、こうした人間力を鍛錬し、かつ、政治課題である人口、貧困、環境などの問題について、政治的観点から歴史を学び、政策を知りその手法を磨き、コミュニケーション力を身につけ、社会で実践し、結果を冷静に検証・修正する能力が不可欠である。
<自民党に提案したい>
党の機関として、党員養成機関を設置し、教育後の各人の人物評価を客観的に行い、各小選挙区の諸条件と政治的ニーズに応えるに相応しい人材を選定し、候補者とする。つまり、地盤、看板抜きの候補者選びを行う。
繰り返しをいとわず言えば、養成機関での養成内容は、以下のようになる。
1. 豊かな教養を養い、品格を鍛錬する。
2. 財政再建、治安、外交、人づくりに関する政策を深く学ぶ。
3. 人口、貧困、環境、エネルギー、食糧・水などの主たる政治的要因について、歴史を学び、現状を把握し、世界的視野に立った解決の道筋を学び合う。
4. 今日及び近い将来における我が国の国益とは何かを探求し、政策策定能力を培い、個別の政策実現方法を研究する。霞が関に作文させ、それをベースに政策項目を羅列するようなことは止めてほしい。自民党という立ち位置からの自らの発想で立案してほしいし、党として各政策の実施の優先順位を明らかにしてほしい。
5. データのとり方、まとめ方を身につけ、情報(インンテリジェンスを含め)戦争の現実を知り、発信・管理方法を含め、実戦対応ができる能力を養う。
また、各国の友好政党と交流し、政策論争を行える仲となり、政治家としての資質を向上し合い、友情を育む恒常的な活動を期待したい。
当面、国連安保理改革を急ぎ、常任理事国における意思決定過程を見直し、EUのような「建設的拒否」を導入するなど国連の機能を復活させてほしいと考える。
ーー
岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)
◇◇岡光序治氏の掲載済コラム◇◇
◆「孤独死防止策に関する提案」【2023.10.3掲載】
◆「どうする地域社会福祉?」【2023.7.11掲載】
◆「少子化対策私見」【2023.4.18掲載】
☞それ以前のコラムはこちらからご覧ください。