野田立憲民主党代表が支える石破政権
榊原智 (産経新聞 論説委員長)
石破茂首相が自民党衆院1期生15人との会食に際し、1人当たり10万円分の商品券を配った問題を起こし、内閣支持率が急落した。
政治資金規正法第21条の2は、個人が政治家の政治活動に関して寄付をしてはならないと定めている。禁じられる寄付には、金銭のほか商品券といった有価証券も含まれる。
首相は、商品券の配布は規正法違反に当たらず、「会食の土産代わりに、家族へのねぎらいの観点から、ポケットマネーで用意した」と釈明した。だが、10万円分の商品券は社会通念上、土産の範疇を超えている。首相と1期生議員の会合は、首相自身の求心力を高めたいねらいがあるのは疑いようがなく、首相にとって政治活動であるのは明らかだ。
首相が違法性を否定しているのは理解しがたい。国民が怒るのは当然で、首相の行動はアウトというべきだろう。
旧安倍派の政治とカネの問題で、首相は、検察の捜査で嫌疑なしとして起訴されなかった自民党前職12人の公認を見送った。他人に厳しい対応をした以上、首相も厳しく自らを律するべきだろう。それなしに政権に居座っても恥を知らない人物とみなされ、首相の言葉、発信は国民の心にますます届かなくなると思われる。
石破首相は昨年夏、「保守政治家 わが政策、わが天命」(講談社)という本を世に問うている。保守政治家を名乗る以上、廉恥心なき保守などあり得ないと知るべきだ。
今回の商品券配布問題をめぐっては、立憲民主党の野田佳彦代表も、政治家としての資質を疑わせる言動をとった。
それは、16日の青森市内での講演で飛び出した。
野田代表は、石破首相の商品券配布を批判し、「徹底して説明を求める。内閣不信任決議案提出や退陣を求める声があるが、私は簡単に求めない」と語った。
さらに自民党について「トップを早く代えて清新なイメージで参院選に臨みたい、衆院を解散したいということだろうが、そうは問屋が卸さない」と述べた。
これは、国民のために立民がどう行動すべきかということよりも、参院選、衆院選をどうすれば立民が有利に戦えるかを優先する発想だ。はっきり言って党首失格である。支持率の低下した石破首相の政権がよたよたと続いた方が選挙に有利というだけの話である。
もしかすると、参院選で大敗した与党と立民の大連立をねらっているのかもしれない。
だが、野田氏が、石破首相が首相の任にふさわしくない、またはふさわしくない問題行動をとったと考えているなら、一日も早く退陣させるのが国民にためになるはずだ。それをせずに、支持率の下がった、政治力の低下した石破首相が国の舵取りを握り続けるに任せ、夏の参院選で有利に戦いたいというのでは、国家国民よりも党利党略を優先していると言われても仕方あるまい。
今は野党が衆院で多数を占めている。政治は勢いが大切だ。野党第1党の立民が速やかに他党へ働きかけ、内閣不信任決議案を提出すれば可決できる可能性はあった。そこで石破首相が内閣総辞職を選べば、その後の首班指名選挙で政権を奪えるかもしれない。また、首相が解散総選挙を選んでも、野党は有利に戦えるだろう。
もちろん、それで立民が政権を確実にとれるわけではない。それでも、絶好の機会である。野田氏は政権交代実現を旗印に掲げていたのに、いま立ち上がらないようでは、平凡な政治家というほかない。
筆者は、立民の安全保障政策などが非現実的であるため、同党に政権担当能力があるとは考えていない。そうはいっても、野田氏の率いる立民の迫力のなさ、計算づくの立ち回りをみるとため息をつくしかない。野田氏の立民こそが石破政権の最大の支持勢力になっている。
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榊原 智(産経新聞 論説委員長)
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