自由な立場で意見表明を
先見創意の会

結婚法制をめぐる議論が熱い

水谷 渉 (弁護士)

1.はじめに

結婚が子孫や家の存続のためのツールから、現行憲法のもとで、個人の幸福追求のためのものに転換した、と叫ばれて久しい。
しかし、具体的な問題に直面した時には意見は割れる。たとえば、同性婚、選択的夫婦別姓問題、皇室の結婚問題などで、顕著である。

2.同性婚についての札幌地裁判決

3組の同棲カップルが、同性婚を認めない現行法は違憲であるとして、国に損害賠償の支払いを求めて札幌地裁に提訴した。

札幌地裁は、令和3年3月、同性婚を認めない現行法は、憲法の平等原則に反すると判断した。ただし、国に対する損害賠償請求は否定した。

インターネットの情報から、この裁判官の性別と年齢(推測)をみてみると、50代前半の女性裁判長、40代の男性裁判官、30代の男性裁判官である。

3.夫婦別姓の最高裁決定

令和3年6月23日、選択的夫婦別姓について、最高裁の判断が下された。現在の15人の裁判官は男性が13名、女性が2名である。最高裁判所裁判官の定年は70歳であり、ほとんどが65歳以上である。4人の裁判官が夫婦別姓を認めないのは憲法違反と指摘した。

4.どちらも驚いた判決

筆者は40代後半であるが、20年以上前に、大学で家族法の講義を受けたときから、憲法学や民法学の学説において、夫婦同姓の強制は違憲であるとする考えが支配的であった。筆者が、テレビ、映画、雑誌、などから受けてきたあらゆる情報は、「結婚は個人の幸福のため」という価値観に基づくものであったように思う。

札幌地裁の同性婚の判決には正直申し上げて驚いた。しかし、勇気とやさしさの滲む判決であり、結婚が個の幸せのためのものと考えれば、当然導かれる結論かもしれない。

最高裁の夫婦同姓に関しては、平成27年の最高裁合憲判決後の大法廷判決であったこともあり、判例変更(違憲判決)がなされるのかと思われた。しかし、ふたを開けてみれば、二度目の合憲判決で、これにもまた驚いた。

令和元年の婚姻件数は 59万 9007組で、離婚件数は年間20万8496組である。働き盛りの女性を中心に不満が募っている。選択的夫婦別姓は、「苗字の変わる幸せ」を否定するものではない。早期に導入されることが望ましいと思う。

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水谷渉(弁護士)

◇◇水谷渉氏の掲載済コラム◇◇
◆「コミュニケーションギャップ」【2021年1月7日掲載】
◆「特養あずみの里の刑事裁判に寄せて」【2020年9月3日掲載】
◆「医療・介護の現場における刑事事件」【2020年3月10日掲載】

2021.07.01