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(掲載日 2005.3.1) |
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「どうしてこんなにゴルフ場の名前が変わるのか」。朝ゴルフ場へ向かう車内での知人のこのひとことが、現在、日本経済が置かれている特殊な状況を端的に現している。
日本経済が順調に推移していた1980年代末頃、円・ドルという通貨単位を別にすれば、日本の株価は米国の10倍であった。大まかに言って日経平均株価は3万円、NY(ニューヨーク)ダウ工業株30種平均株価は3,000ドルという具合である。10数年経った現在、日経平均は1万円強、NYダウは1万ドル強と、ほぼ同水準になっている。相対的に見ると、この15年で日本の株価は米国の10分の1になったということだ。
■ゼロ成長の「異常」
株価は経済を映す鏡だといわれている。実体である経済を振り返ってみると、日本経済がほとんど伸びていない一方で、米国経済の規模はこの間2.4倍に拡大している。具体的には、1990年の名目GDP(国内総生産)は、日本が440兆円、米国が5兆ドル程度であったが、現在は日本が凡そ500兆円に止まっているのに対し、米国は12兆ドルにも達している。
つまり、以前は同じような大きさの体であった二人が15年経ってみると、一人はそのままなのに、もう一人は2倍以上にも成長していたということだ。ただ、GDPは付加価値という概念なので、体の大きさというよりも稼ぎという言葉の方がより適切だろう。
ワールドワイドで見ると、どの国も経済規模は年々拡大するのが当たり前である。米国の過去15年間の名目経済成長率は年平均6%程度だが、これでも世界の国々の平均的な成長率を下回っている。それは経済の規模が大きくなると成長率は鈍化するので、世界一の経済規模である米国の成長率は、必然的に世界の平均よりも低くなるからである。こうして見ると、ほぼゼロ成長の日本は極めて異常な国であることがわかる。こんな国は、おそらく、世界中で日本と今、話題になっている某国ぐらいしかないのではないか。
■買収されたゴルフ場は216コース
また日本ではこの間、地価が10分の1程度にまで下落した。ただし、これは商業地の価格であり、ゴルフ場があるリゾート地は更に下落率が大きい。ゴルフ会員権相場で見ると、実質的に倒産し外資に買収されたところは、ピークの100分の1程度にまで下がっていたものが多い。
稼ぎが2倍以上になった米国が、100分の1程度になったゴルフ場を買うのは簡単なことだ。またゴルフ場が実質的に倒産した背景は来場者数の減少もあるが、本質的には会員権の償還問題であり、実質倒産、経営肩代わりにより償還問題が解決したゴルフ場の買収は、彼等にとって魅力あるビジネスなのだろう。共同通信社によると、この2月で外資系によるゴルフ場買収数は、既に216コースに達している。
日本経済はこのままで良いのだろうか。家計にたとえると、子供が大きくなり大人が年をとっていき、近所の家の収入が2倍以上になっている中で、家計収入が15年間増えない家庭である。いずれ破綻してしまうのではないか。先頃発表されたGDP統計でも日本経済の姿に変化はなく、今年度に入ってからマイナス成長が続いている。
日本経済がここまで壊れてしまった原因や今後の対策については、次回述べることにしよう。
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