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テーマ  政管健保リフォームの前に
投稿者  東京大学医療政策人材養成講座 特任助手 吉田真季
 年金問題を端緒とした社会保険庁解体論に便乗するかのように、政管健保のリフォーム問題が俎上に載ってきた。保険者としての組織をどう設計するかが最大の課題となっている。

 社会医療保険部会に提出された厚労省(案)には3つの案が示されている。以下の3点については3案共通である。


年金等とは切り離し政管健保の運営に特化した組織とすること。
都道府県ごとに保険料率を細分化すること。
健康保険法で保険料率の上下限を法定すること。

 A案は、国の組織のままという形態である。保険者組織として独立するが料率細分化は、各県に支部を設け、その支部が料率改定の申し出をして、厚労大臣が告示で許可するという方式をとる。

 B案は、国から切り離して、政管健保組合のような新たな保険者を設置する形態である。料率細分化は、各県ごとに評議会を作り、その評議会の申し出により、当該保険者の理事会で決定するという方式をとる。

 C案は、各県ごとに「○○県政管健保組合」のような保険者を設置する形態である。料率は各県の健保組合ごとに独自に決定することになる。

 国保と政管健保の統合を図り、地域保険として一本化していく大局的な立場からすれば、C案が最適であろう。この案をとる場合、そもそも県内の医療供給量(病院数・病床数等)が適正であるのかにまで遡って検討し、地域完結型の医療供給体制とセットで保険制度をリフォームし、料率を設定することになる。住民にとって納得の行く地域医療の実現という点では望ましい案といえる。

* * *

 ところが、厚生労働省のおすすめはB案である。B案は、要するに全国一本の大健保組合を作ろうということである。そうなると官僚は、これまで通りの長官ポストはそのままで、新たに大健保組合の理事長、役員、職員という大きな天下りポストを手中に収めることになる。まさにパーキンソンの法則どおりの「改革」ならぬ「官拡」(官の拡大)である。

 平成14年の健康保険法改正において基本方針に盛り込まれた「保険者の再編・統合」という文言が、都合よく読替えられてしまったのではと懸念されるが、誰も止める人がいないので、この流れのままB案が実現するのであろう。ただし、よく監視をしておかないと国民はまたまた、失政のツケをまわされるということだけは留意しておかねばならない。

* * *

 まず、政管健保には約1.5兆円の借金がある。これは、過去の累積赤字と1984年度に廃止された旧日雇保険事業の累積赤字の穴埋め分である。本来一般会計で補填されるべきものであるが、お金がないということで、借金になっている。官僚が考えそうなことは、どさくさにまぎれて、この借金を新しい組織に背負わせることである。そうなったら最後この借金の弁済は、保険料を財源に行われる流れになってしまう。つまり、政府から国民にツケがまわされるのである。本来は政管健保がどのようにリフォームされようが、リフォームされる前に、この借入金は国庫によって精算されなければならないのである。

 次に気をつけなければならないのは、運営コストである。政管健保の運営コストは原則国庫負担である。しかし、国家財政が厳しいという理由で「財政構造改革の推進に関する特別措置法」によって平成10年度から15年度までは緊急避難的に保険料が流用されてきた。ところが、この期限が切れたにもかかわらず平成16年度もまだその流用は続き、あろうことか平成17年度も更に続けられるという。国の組織である今ですらこれである。別法人化されると、これがなしくずし的に恒久化される恐れがある。これも政府から国民へのツケまわしである。

 更に注意しなければならないのは、政管健保の固定資産である。政管健保には、社会保険病院の土地建物代等で数千億円の固定資産がある。これは保険料を使って購入されたもので、被保険者の財産である。従って当然リフォームの時には、この資産も新しい組織に移転されなければならない。

 我々は、特殊法人が独立行政法人化した時の苦い体験を持っている。改革とは名ばかりで、特殊法人が整理されるどころか過去の債務が帳消しにされた上、追い銭まで払わされて、悠々と官僚の天下り先として更に地歩が固められた。もちろん、そのツケは何の説明もなく国民の税金や保険料によって払われたのである。

 このようなリスクを国民が再度背負わされる可能性があることを考えると、保険料率の細分化も胡散臭く映ってくる。

* * *

 参考までに、地域格差が大きいことで知られている自賠責保険の損害率(平成15年度データ)を参照すると、保険料に対する保険金の比は最高と最低で2倍以上である(最高福岡107.6% 最低長野45.3%)。一方、老人医療費の格差は1.5倍である。(政管健保のデータではない。政管健保のことなのに老人医療費に置き替えられて、都道府県別料率の試算が行われていることに要注意。)しかしこの自賠責保険ですら、都道府県別料率が導入されていない。自賠責保険よりはるかに格差の小さい政管健保が先頭を切って導入しなければならない積極的な理由はないのである。むしろ都道府県別料率を導入すると運営コストが大きくはね上がることだけは間違いない。

 そうまでして都道府県別料率を導入したい官僚の狙いは何なのだろうか。都道府県別に作る評議会に、すなわち天下り先の開発ということではなかろうか。そしてもちろんこれらのコストも全て保険料にはね返ってくるという仕掛けなのである。

 年金にしろ、医療にしろ、社会保障である。社会保障であるからには、国の責任で整備拡充されなければならない。その意味で国が実施主体となるのは一向に構わない。今のままで十分である。むしろ地方に任せたり、民営化などすべきではない。必要なのは国の行為を監視する機能である。どうも小泉政権下の改革というのは、国民にツケを廻す仕組みのように見えるが、これ以上ツケ廻しが横行せぬよう、また新たなツケ廻しの材料が生じぬよう見張る民間側の監視機構の設立こそが肝要であると思う。
テーマ  土地・ゴルフ会員権の売却利益にかかる税金が安くなる
投稿者  (株)東京ファイナンシャルプランナーズ代表取締役会長 山田 淳一郎
2005年3月1日掲載のコラム「外資に売られる日本のゴルフ場」に対するご意見です。
>> コラム「外資に買収されるゴルフ場」へ
 コラム「外資に売られる日本のゴルフ場」(>>コラムへ)を興味深く拝読させていただきました。ゴルフ場に関連して、ここでは、2005年2月1日の最高裁判所の判決により、相続/贈与取得したゴルフ会員権や土地の売却益にかかる税金が多少、軽減されることになった、というワンポイント・アドバイスをしたいと思います。

 まずは、以下の設問を読んでください。
[ 問 ] 父が500万円で購入し所有していたゴルフ会員権をもらった(贈与を受けた)。息子は、自分名義にする為の名義変更料を100万円支払って会員になった。その後、この会員権を相場の600万円で売却した。さて税金(譲渡所得税)はかかるか。贈与を受けたことに伴い、贈与税37万円を納めた。 
 正解は、「税金はかからない」です。最高裁判決に伴い、設問のケースでは譲渡利益が発生しないことになりました。

 設問にある「息子が支払った名義変更料100万円」は、最高裁判決の中の「受贈者が支払った『当該資産を取得するための付随費用』」に当てはまります。それは、息子によるゴルフ会員権取得(受贈)に要した金額であり、「取得原価」を構成することになります。

 尚且つ、受贈財産の所得税の取り扱いは、贈与者(父)の取得原価(500万円)も引き継ぐので、息子の取得原価(そして譲渡原価でもある)は「500万円+100万円=600万円」になります。それを息子は600万円で売ったのですから、売却利益は「600万円−600万円=0(ゼロ)円」。したがって譲渡所得税はかかりません。

* * *

 上述の最高裁判決が出るまでは、財産を相続や贈与によって取得したことに伴う付随費用の支出は、「取得費(取得原価。売却した場合には譲渡原価になる。)を構成しない」という取り扱いでした。この取り扱いだと、取得原価(譲渡原価)は500万円。売却利益は、100万円発生する(600万円−500万円)ことになります。そして、上記の設問の場合でいえば、税金(譲渡所得税)が若干かかったわけです。ちなみに、設問の最後にある「贈与税37万円」は、譲渡所得税の計算上、取得原価になりません。したがって、譲渡所得税がかかるか否かの判断には何の影響もありません。

* * *

 最高裁判決の理由の詳細は、最高裁判所の「平成17年2月1日 第三小法廷判決 平成13年(行ヒ)第276号 所得税更正処分取消請求事件」を参照していただくとして、本稿では、従来の取り扱いが誤りであったとする判決により、相続や贈与により取得した財産を売却した場合の所得税の取り扱い、すなわち、付随費用の取り扱いが180度転換したことを紹介しました。

 長い間、「相続や贈与により財産を取得した者が負担した名義変更料や登記費用等の付随費用は取得原価を構成しない、即ちその資産を売却した場合の譲渡原価を構成しない」とする取り扱いが当然のごとく執行されていました。5年間の訴訟の結果、これは誤りだった、と最高裁に指摘された、画期的な判決となったのです。一審、二審とも、納税者の敗訴だったのが、最高裁で見事に逆転勝訴を勝ち取ったわけです。
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