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コラム
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(掲載日 2007.11.06)
 福田康夫首相から提示された自民、民主両党を軸とする「大連立」構想を民主党は拒絶、その責任をとって小沢一郎氏は民主党代表辞任を表明した。何がどうなっているのか、周囲があっけにとられている間に、幕を下ろしてしまった福田・小沢劇場。小沢氏のリーダーシップを欠いた民主党はどこに行こうとしているのか。

 福田首相は2日夜の報道各社とのインタビューで、参院選直後から政府・自民党内に大連立構想が存在していたことを認めている。国民批判の的になる可能性が高い「衆院3分の2による再議決」でしか政策を実現できない政治状況を打破するためには、民主党との協力体制確立は不可欠である。

 しかし、政権交代を掲げて自民党への攻勢を強める民主党が、中途半端な話し合い路線に乗る可能性はほとんどなかった。首相が「そうであれば、思い切って新体制(連立)を」と考えたのも自然なことだ。

 小沢氏の思いも首相に近いものがあったと推察できる。政府与党が今国会の最優先事項と位置付けている新テロ対策特別措置法案への説得力のある対案をまとめられず、米国を含めた国際社会から「民主党は国際貢献に消極的だ」という批判も出始めていた。

 参院選で掲げた年金改革、子育て支援、農業再生の政策も、衆院における与党の圧倒的優位という壁に阻まれて、実現の見通しはまったく立っていない。手詰まり状態の中で、与党とのにらみ合いだけを続けていれば、国民の批判はいずれ民主党に向いてくるとの懸念もあったろう。

 首相はこうした状況を見極めたうえで、今国会会期末(11月10日)、自らの訪米(同17日から19日)を控えたタイミングで、大連立というカードを切った。

 自衛隊の海外派遣について、国連中心主義という小沢氏の持論をすべて受け入れ、連立政権が次期衆院選後も維持できるよう選挙制度を中選挙区制に戻すことも含めた提案だったという。

 小沢氏も4日の辞任表明記者会見で「国連の活動以外は自衛隊を海外に派遣しないというのは安全保障政策の大転換、憲法解釈の大転換だ。この一点をもってしても(自民党との連立政権樹立に向けた)政策協議に入るのがいいと思った」と首相の対応を評価している。

 与野党双方のリーダーの意見が一致したのに、なぜ、連立構想が頓挫したのか。その理由は小沢氏の会見で明らかだ。「民主党は、いまだ、さまざまな面で力量が不足している」。

 2度目の党首会談を受けて開かれた2日夜の民主党役員会で、同党の幹部らは口々に大連立拒否をまくし立てた。根底には、参院選以来の対決戦術をそのまま続けていれば、政権交代への道が開ける―という単純な発想しかない。

 かつての社会党の「だめなものはだめ」戦術と酷似している。「政権の一翼を担い、参院選で国民に約束した政策を実行する。そのことが、国民の理解を得て民主党政権を実現する近道と判断した」小沢氏の認識とは大きな開きがある。

 小沢氏が幹部を説得できなかったことにも、もちろん問題がある。小沢氏は辞任表明会見で「私が代表として選任した役員から不信任を受けたに等しいと考える」と述べた。他人とのコミュニケーションを苦手とし、相手が同調してこなければ早々に説得をあきらめてしまう小沢氏の欠点が露呈した格好だ。

 だが、連立拒否を言い張った幹部らに次の一手があるとは思えない。政府与党は今後、国会の会期延長を強行、新テロ特措法の成立に向けて衆院再議決戦術に出るものとみられる。こうした事態に民主党は国民の支持を失わずに対応できるのか。

 ポスト小沢の新執行部が今後の国会・選挙戦術を誤れば、民主党による政権交代はこれまで以上に遠のくことになりそうだ。
 
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