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テーマ  中医協改革の問題について
執筆者  医療法人社団 青柳皮膚科医院 青柳俊 理事長
2005年2月1日掲載のコラム「中医協改革の虚妄」に対するご意見です。
>> コラム「中医協の虚妄」へ
 中医協のあり方に対する各種方面からの意見は以前から数多くあった。中医協そのものが「医療関係者の賃金闘争」、「医療関係者のパイの奪い合い」、「政治折衝へのプロセスに過ぎない」、「厚生労働官僚の隠れ蓑」、「各種団体の既得権益(の温床)」と指摘されても仕方のない部分もあり、第一回コラム「中医協の虚妄」(第一回コラム「中医協の虚妄」(>> コラムへ)で指摘されている内容を全面的に否定するつもりはない。

 中医協の位置づけや中医協委員の構成などが改革の課題とされているが、私はむしろ、中医協が国民や患者のニーズを反映した具体的な提案のもとで、議論を推し進めることのほうが重要であると考えている。ここでは、中医協がどのような点を改めれば、その機能を果たし得るのか、一部の誤解を解消する形で私の意見を述べてみたい。

* * *

 各種の審議会や協議会は現在、政策提言や政策決定に活用・利用されている。国会の政策立案能力に期待できない現状で、官僚による政策立案の「隠れ蓑」に利用されている面に反論の余地はない。

 一方で、中医協は他の審議会と違い、厚生労働大臣から諮問され、答申することができる協議会である。確かに、黒子であるはずの事務局が公益委員と一体となって会議の運営を模索することもある。しかし、中医協委員の自覚と努力によっては、運営方法を正常に戻すことは可能だ。

 中医協には総会とともに、各種小委員会(基本問題、調査、薬価、医療材料)や、いくつかの専門部会がある。議論の内容は、相当専門的なレベルに及び、すべて開示されている。一般的には診療報酬改定の諮問を受け、答申することがその役割としてあげられるが、どのような医療が求められているかの議論も行われている。

* * *

 中医協の機能を回復させるためには、まず、答申内容を「診療報酬改定幅の決定」と「具体的な改定項目の決定」を分けて考えることが必要であろう。そこからさらに、それぞれが抱える問題点を解消していかなければならない。表12に、委員としての経験を踏まえ、改めなければならないと考えた課題や問題点を提案事項としてまとめたので、ご参照いただきたい。

 中医協および中医協に関連する各種委員会が、十分機能すれば、国民の理解を得られるであろう。中医協の各委員が根拠のある、説得力のある具体的な提案を心がける努力を続けるべきであり、そのことが信頼回復につながるただひとつの方策と思われる。

 介護保険の給付費部会が、患者代表をはじめとする各種団体の要望合戦の場になっている現状をどのように考えるべきか。機能不全に陥り、官僚の政策決定の隠れ蓑になっていることは明らかである。中医協を給付費部会の二の舞にしてはならない。

* * *

 非常に残念なことに、現役の委員や官僚の一部が不祥事を起こしたために、中医協に対する不信感を助長することになったのは事実である。中医協の委員として2年間(2002年4月〜2004年3月)、協議会のあり方を十分考慮し、でき得る限りの努力を試みた者としては極めて残念な気持ちでいる。中医協には、「形」の改革ではなく、「中身」の改革が求められていることを忘れてはならない。

参考:資料ページへ >>

表1 「改定幅を決定するための明確な指標とルールづくり」
(1) 医療経営実態調査、薬価調査、医療材料調査には、信憑性のあるデータの収集が不可欠。
(2) 物価、賃金、経済動向のデータが、その時々で利用されたり、無視されたりしている。データの取り扱いに一貫性をもたせるべきである。
(3) 医療経営に関するコスト評価の分析・評価がない。医療機関の協力を得てデータの収集をすべきである。
(4) すべての調査結果の算出に時間差があり、現状を表現していない。リアルタイムにデータの収集が出来ないか。
(5) 最終判断や決定をだれがするのか、明確にすべきである。2004年の改定については、改定幅の議論の最終段階では、支払い側と診療側との折衝が行われ、中医協として、改定幅も含めて答申し、閣議決定された。しかし、このように中医協として合意したケースは少ない。
(6) 予算編成との関係で、厚生労働省、財務省、さらには政府与党、官邸の関与も介在する。これらに、どのように対処すべきか。私の委員在任中は、財務省の考え、官邸の意向は排除するよう配慮してきた。
(7) 医科、歯科、調剤それぞれの分野で改定幅が決定されてきた。医科を包括的に取り扱うべきか否かを議論してはどうか。
(8) 外来と入院、診療所と病院、医療技術とモノ代、ホテル費用という分類で改定幅を検討することが出来ないか。(7)、(8)は、根本的な部分でもあり、十分な議論が必要である。
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表2 「診療報酬改定の具体的項目と改定率について」
(1) 改定項目の提案(診療側として)は、日医がとりまとめを行うべきである。
(2) 項目は、診療科ごと(学会、医会によっても異なる例もある)、病院団体ごと、患者団体ごと、医療関係職種ごとに設定する。

(※2004年改定では、可能な限りの改定要望をまとめ上げた。その実現のためには、医療に対する国民・患者のニーズを的確に把握することが求められる。不十分であるが、グランドデザインで、ニーズ調査の結果を報告している。国民に理解を求めるためには、日医が取り組むべき大きな課題である。要望の選択基準としては、臨床の現場感覚を基に、患者にとってのメリットを第一義的にすべきである。財源効率化のための政策誘導には、限界がある。)
(3) 改定財源の確保と財源影響率算定の精緻化を進める。

・確保された財源の配分基準を明確化する。
・正確な財源影響率の算定方法を確定する。
(※データベースは、前回改定直後でなく、1年を経過した時点で更新する。)
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