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テーマ  医療と法律について
投稿者  医療と法律研究協会会報誌「医療と法律」編集委員 安福 謙二
 医療事故、医療過誤事件についての裁判事例が増え、社会的な関心も高まって来ています。司法制度改革審議会の2000年11月20日の中間報告、2001年6月12日の最終意見書において、医療裁判等の専門性の高い事件への対応強化が求められました。これを受ける形で2001年4月、東京地方裁判所と大阪地方裁判所の民事部に「医療集中部」が設置されました。その後、千葉地方裁判所、名古屋地方裁判所にも同様に「医療集中部」が設置されました。

 これにより、審理方法はシステム化され、計画的に審理が行われるようになり、当事者である医療機関側の行うべき主張や立証方法がマニュアル化されました。現在では、医療訴訟の審理促進が図られ、(民事)医療訴訟の審理期間は平均2年余と、10年前の約3年半と比較すると約3分の2の期間に短縮されました。

 反面、訴訟に関わる事務の増大、時間的制約の厳しさは、以前と比べものになりません。事件を担当する弁護士の負担増と平行して、当事者である医師・医療機関側の対応するべき事務も飛躍的に増大しています。訴訟が起きてからでは、とても対応しきれない事務量と言うことができます。

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 だからと言って、対応が不十分ですと、訴訟的には明らかに不利に働きます。従って、医療に従事される方々は、いざというときにきちんと対応することができる心構えと、それを踏まえた日常的な業務の進め方が必要です。少なくとも、医療機関側としては、証拠保全の手続きがあったら、カルテ類の整理や翻訳事務などの基礎的な作業は直ちに開始すべきであると思います。

 日常的には、カルテ類、看護記録類、検査データや手術記録・・すべてが、正確にして適正に、且つ必要にして充分な記録が適時に行われていることが、求められるのです。これは同時に、医療側が不当な非難を受けないために、そして、身を守るために最も確実な手段でもあるのです。

 また、事故があったときには、認めるべき過失は、速やかに認め、いたずらに引き延ばしを図ることがないようにすることも大切な心構えです。そうした見極めを迅速に行い、あらゆる事態に対応するためにも、カルテ等の記録の管理は、危機管理の基礎の基礎と言うことができると思います。

 また、医療事故に対する刑事事件の立件増加を映して、2002年には、東京地方検察庁に医療専門班がおかれました。ますます、医療従事者は、法的な対応能力を高めて行くことが求められていると言わなければならないと思います。

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 こうした状況から、医療の安全につき社会的な厳しい目があることを、医師や医療機関が、実感されていると思います。結果、多くの学会関係等でも安全に対する、或いはインフォームドコンセントに対する真剣な取り組みが始まり、その実も確実にあがっています。しかし、同時に、取り調べが、余りにも厳しすぎることは医の安全には貢献しません。

 刑事における行き過ぎた捜査の手法は極めて問題です。取り調べで凶悪犯並みに罵倒されたり、侮辱的な扱いを受けた経験を持つ医師も少なくありません。これは医師だけが受けている問題ではありませんが、だからこそ、医師と医療機関は、法的な対応能力を持たなければならないのです。

 同時に、法曹関係者においても、医療現場での現実の姿を正しく認識すること、そして、正確な医療知識に基づいた法的な構成を図り、その上に立って医療における注意義務、過失の議論を行うことが、強く求められています。そうでなければ、医療従事者と法律関係者は、真の意味で相互に理解することができず、医療訴訟では、終局的に国民の医療の安全も、医療技術の向上も、図ることができず、不毛の対立感だけを構成することになります。

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 そもそも医療にとって、患者さんは、医療の対象者であると同時に、医療・治療行為を行うチームの一員です。別の角度から言えば、ビジネスとは異なるとは言え、医療行為、医療業務が成り立つのは、患者さんがあっての話です。すなわち、医療が業務として成り立つには、多くのステークホルダーが存在してのことですが、患者さんが、その重要なステークホルダーであることは、論を待ちません。

 だからこそ、インフォームドコンセントが必要なのであり、治療のプロセスを説明する為の診療情報の提供なのです。当然、患者さんに対しての医療プロセスの説明には、高い透明性が求められることになります。その意味で考えれば、個人情報保護法が求める趣旨は、まさしく医療プロセスを改善し透明度を高めるために、大きな役割を果たすと言えるでしょう。

 4月1日からの個人情報保護法の施行にあたり、医療機関に限らず、多くの事業者は、その実務面の煩雑さとコストの面で、個人情報保護法の施行に抵抗感を抱いていると聞きます。しかし、営利法人であれ、医療機関であれ、あるいは行政であれ、消費者あって、投資家あって、患者あって、国民あってのものです。その人たちに理解され、支持されずして、如何なる事業も仕事も成り立ち得ません。

 理解されるには、事業や仕事のプロセスを判りやすく且つ透明性を保って、且つ患者さんの知りたいと思うこと、求めているニーズの本質を把握した上でそれに答える丁寧な説明、インフォームドが大切なのです。診療記録の開示も、個人情報の開示も、まさしくそのためにあるのです。

 ※上記の原稿は「医療と法律」2005年4月号より抜粋。新・先見創意の会のホームページ掲載向けに一部編集した。
テーマ  「ホームページ」開設後4ヶ月を経過して
投稿者  医療法人社団 青柳皮膚科医院 理事長 青柳俊
 「新・先見創意の会」に生まれ変わると同時に、「ホームページ」を通した活動を開始して4ヶ月が過ぎた。この間、「先見創意の会」の旧会員のうち、どのぐらいの人数の方に新しい目的に賛同し、会員として継続していただけるか、また、新規の入会者の方をどのぐらい集められるのかを、第一の課題として前進してきた。

 ホームページを開設した2月1日時点では、「先見創意の会」からの継続会員の人数は240人強。これをスタート地点に、300人を超える新規会員を集めることができた。2005年6月1日時点で会員数は585人に達している。目標会員数は1,000人。従って、今後も、もちろん、新規入会者を増やすための努力を続けていく方針である。

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 第二の課題は活動内容の質であろう。「質」は、主に、ホームページのコンテンツ(情報の内容)をどのぐらい充実できるかにかかっていると言える。コラム・ページは、ボランティアで投稿していただいているコラムニストの方々の力作が続いており、当初の目的は十分達成されているように思われる。オピニオン・ページについても、最近は投稿数が増えており、今後もさらに活発な意見交換が行なわれることを期待している。そして、SSネット勉強会のページのコンテンツの充実化も進めたい。全国で開催される(または、開催された)勉強会を紹介したいのだが、紹介件数を増やすにはどうしたらよいだろうか。何らかの改善策が必要なのかもしれない。

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 特に気になるのは、アンケート調査に対する回答率が、回を重ねるごとに低下していることである。テーマに問題があるのか、アンケート調査に応じる必要性を感じる人が少ないのか、その他の問題があるのか−−。問題点があるならば、それらを明確にして改善策を練らねばならない時期に来ているように思われる。

 今まではどちらかというと問題意識を持っていただくようなテーマが多かった。しかし、これからは会員の皆さんが興味や関心を持つテーマを積極的に取り上げてはどうだろうかと考えている。本会の目的のひとつは、医師の意見発信である。ある程度まとまった意見や意識を発信するためにも、より多くの会員の方にアンケートの参加していただくことが必要となる。アンケートにお答えいただくためにも、何らかの方策を講じる必要があるのかもしれない。

 ホームページ開設以降、新規会員の募集に追われつつも、幹事の1人として、当初の目標を達成するためにはどうしたら良いのか自問自答してきた。4ヶ月を経過したこの機会に会員の皆さんにも、是非、率直なご意見を求めたい。
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