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小児救急医療体制の整備には医療圏の広域化を
北海道在住 江原 朗
小児救急医療体制の整備が社会的に求められている。国レベルでは、平成11年度(1999年度)から平成14年度(2002年度)にかけて、各2次保健医療圏内の複数の病院による輪番制の整備や、複数の2次保健医療圏の中から小児救急の拠点となる病院を1ヶ所指定することにより、365日24時間対応可能な小児救急医療体制の構築を進めてきた。平成14〜16年度(2002〜2005年度)のデータをもとに、こうした体制づくりの進捗状況や、課題について考察してみたい。
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輪番制は平成11年度に「小児救急医療支援事業」(原則2次救急医療)として施行が開始され、拠点病院による小児救急医療体制は平成14年度以降「小児救急医療拠点病院運営事業」(同)として整備が進められた。このため、ここでは、「平成14年全国小児救急医療関係主管課長会議資料」と「平成16年全国小児救急主管課長会議資料」を参考にし、平成14年以降の両事業の進捗状況について、それぞれ述べる。
まず、2次輪番制の施行状況をみると、平成14年から16年にかけて、新たに2次輪番制を導入した地区は32。平成16年の時点で、2次輪番制を施行している小児医療圏は126地区と全体(平成14年、16年の両資料に記載されている356地区)の35%にとどまった。
病院小児科医数に目を向けてみよう。平成16年の病院小児科医数は、平成14年の時点ですでに輪番制を施行していた地区では40.3人いた。一方で、一貫して輪番制を施行していない残る65%の地区では、16.27人にとどまり、両者の間では、統計学的な有意差が認められた。
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しかし、平成14年には輪番制がなかったものの、平成16年までに新たに輪番制を導入した地区の病院小児科医数は平均23.4人。この数は、輪番制を施行していない地区の病院小児科医の数(16.27人)とほとんど差がなかった。つまり、輪番制を実施できない地域において無理をして体制を整備したということである。今後さらに輪番制を施行できる2次医療圏はごくわずかであろう。
では、「拠点病院」を通じて小児救急医療を十分提供できているのだろうか。拠点病院を通じて小児救急医療を提供する医療圏の病院小児科医数は平均54.2人。平成14〜16年の間に新たに13の拠点病院が指定されたが、拠点病院のある2次医療圏の病院小児科医数は平均71.2人。しかし、このように急速な医師数の増加は通常あり得ない。行政が、すでに「拠点病院」の機能を果たしていた病院を「拠点病院」として再定義しただけである可能性が高い。
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こうして小児救急医療体制の整備の進み具合をみると、平成14年以降それほど進んでいるとはいえない。輪番制の普及が広がっていない理由としては、輪番制を実施するのに十分な病院小児科医数がいない2次医療圏が多いということがあげられる。例えば、いくら複数の2次医療圏を組み合わせたとしても、その小児救急医療圏にいる病院小児科医数が平均16人しかいなければ、輪番制の実施は困難であろう。
私は、医療圏の設定が現在のままでは、小児救急の整備は進まないと考えている。小児救急医療体制の崩壊が危ぶまれる今、整備を迅速に進めるためにも、小児救急医療圏の合併、あるいは、3次医療圏を小児救急実施圏域とするなどの早急な広域化は必須であろう。小児科医数が少ないことを考えると、過疎地においては、高速道路網やヘリコプター等の活用も検討事項に加えるべきである。同時に、小児科診療の指導を受けた内科医を増やすなど、プライマリケアと専門病院の分化を進めることも小児救急体制の整備には必要である。
<参考文献>
(1)「二次医療圏別の小児救急体制に関連する医師数・医療施設・救急体制・人口の検討・平成14年度厚生労働科学研究補助金(医療技術評価総合研究事業)分担研究報告書」(田中哲郎、他著)
(2)
厚生労働省資料-1
(3)
厚生労働省資料-2
(4)
全国小児救急医療関係主管課長会議資料-1
(5)
全国小児救急医療関係主管課長会議資料-2
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