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診療報酬等▲3.3%ダウンで経営破綻も |
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日本医療総合研究所 取締役社長 中村十念 |
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診療報酬等の改定幅が決まった。医科で▲3.3%(診療報酬本体▲1.5%+薬価・材料▲1.8%)とかなりの大型切り下げである。このマイナス改定の経営的意味を検証してみよう。
今、次のような損益構造をもった医療機関があったとする(図1参照)。この医療機関は院内処方で売上100に対して、医薬品や医療材料の仕入れ及び外注検査等に30(売上原価率30%)を要しているとする。すると粗利益は70となる。
人件費や物件費の一般管理費に65を要し、営業利益は5であるとする。金利に1を要し、経常利益は4(経常利益率4%)であったとしよう。さて、診療報酬マイナス改定によって、患者の数に変化がないとすると、売上は96.7となる(図2参照)。売上原価率30%は変わらないとすれば、粗利益は67.7となる。人件費や物件費はそうそう簡単に減らせるものではないので、65のままとする。そうなると、営業利益は2.7となる。実に半分近くが吹き飛ぶことになる。銀行が金利をまけてくれるはずもないので、金利はそのままである。そうすると経常利益は1.7となる。(経常利益率1.8%)約6割がなくなる。往々にして、3.3%の改定だから利益も3.3%のダウンで済む、と思われがちであるが、とんでもない誤解である。
もっと恐いケースも十分考えられる。今回は患者負担があがった。それによって受診抑制が確実に働く。その率を1%と仮定しよう(図3参照)。そうすると、なんと営業利益は60%吹き飛び、経常利益は75%が失われる。無借金のころはいいが、借金のあるところは返済に滞りが出るリスクも十分考えられる。借金の多い医療機関は倒産回避のために、今のうちから金融機関と弁済のリスケジュール(金利や弁済期間の見直し)について協議を開始することをお勧めしたい。
以上の例は、経常利益率が4%のところを例にした。しかし、医療機関の中には4%以下の経常利益率のところも数多い。それらの中には、このマイナス改定を契機にしたキャッシュ不足から、経営破たんに陥るところが出てくるであろうことは想像に難くない。注意深い舵取りが望まれる。
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