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「シンジケートローン」に御用心 |
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日本医療総合研究所 取締役社長 中村 十念 |
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皆さん、「シンジケートローン」なるものをご存知であろうか。ある銀行が音頭を取って銀行団(シンジケート)を編成して、グループで融資を行なうという仕組みである。もともと、カントリーリスク含みの国家事業に対する融資や、一行ではリスクを負担しきれない大型の資金調達ニーズに対応するローンの仕組みであったが、それが最近では小型化している。ある大手銀行の開示情報によると、数年前までは平均で1件当たり数百億円の規模だったものが、昨年度は100億円規模にまで縮小しているという。
小型化は、今では極端化し、超小型化と言っても良い状況となりつつある。ある銀行員の話によると、融資額が5億円を超えるとシンジケートローンが選択肢になるそうである。最近遭遇した例では6億円のものがあった。シンジケートローンと一般のローンで何が一番違うかというとシンジケートローンは通常の金利のほかに莫大な手数料をとられるということである。
まず、アレンジャー手数料というのをとられる。アレンジャーとはシンジケートローンの幹事のことである。先ほどの6億円の例では、貸付額の3%、1,800万円がアレンジャー手数料であった。
次にエージェント手数料というのをとられる。エージェントとは借受人の代理人ということであろう。先ほどの例では、契約時に800万円と6年間にわたり、毎年100万円を払うことになっていた。合計1,400万円のエージェント手数料である。遭遇例では、アレンジャー=エージェントであったので、この銀行は「一粒で二度おいしい」ということになる。
次に参加手数料というのをとられる。この参加という意味は不明である。先の例では金額の2%という計算で1,200万円であった。手数料だけを合計しても、何と4,400万円である。消費税を入れると4,620万円が借受側の負担である。繰り返しになるが金利は別にとられるのである。これだけではない。どういう訳か契約に関して銀行側が使った弁護士の費用及びアレンジャーやエージェントに生じた一切の費用や経費まで借り手に請求されるそうである。いくら請求されるかはわかったものではない。
また、シンジケートローンの場合、通常の一般ローンで締結される「金銭消費貸借契約」で定められる以上の義務が借受側に課される。例えば、自己資本の対前期比の20%以上の減少や、2期連続の赤字が、期限の利益の喪失(要するに借り入れ期限前でも返済を要求されるということ)の事由となり得ることなどである。
シンジケートローンの超小型化は、銀行の手数料商売の拡大の流れの中にあると思われる。しかし、一行でも可能な取引をわざわざ銀行の数を細分化して手数料を絞り取られるなどというサラ金まがいの商法は、借り手である中小企業の立場からすれば、「やらず、ぼったくり」の感を免れない。借受側には何のメリットもないからである。
巨額の手数料は、ほとんど契約時に一挙に取られるということにも留意が必要である。何故なら、その会計年度は多額の手数料が原因で赤字に陥ってしまうことがあり得るからである。そうなると、中小企業では先述した自己資本の毀損率が20%を超えるケースが簡単に生じてしまう。
その結果、銀行が圧倒的に有利な立場に立つことになる。借受側は、期限前弁済を迫られても契約上文句が言えないからである。このことは、シンジケートローンは、中小企業金融には不向きであると私が判断する理由のひとつである。
診療報酬マイナス改定などによって、医療機関経営が悪化する中、借り入れを増やさざるを得ないケースも多数発生するであろう。足元をみられて無闇にシンジケートローンを押し付けられないよう、新春早々心苦しいが、御用心、御用心である。
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