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(掲載日 2006.01.27)
サブテロメア領域の刻印
―染色体の片隅が叫ぶ真実―
<連載1> あってはならない出来事
澤 倫太郎
日本医科大学生殖発達病態学・遺伝診療科 講師
いささか旧聞だが、昨年のクリスマス、中学生の娘にねだられて、有楽町で映画を観た。「チキン・リトル」。これまでピクサーとの共同でフルCGアニメ「ファインディング・ニモ」「MR.インクレディブル」などを世に送りだしてきた手書きアニメの老舗ディズニーが、初めて自社単独で製作したフルCGアニメである。
平和な町オーキー・オークスに暮らすニワトリの少年チキン・リトル。ある時、頭上から落ちてきたドングリを空のカケラと勘違いして大騒ぎし、町中をパニックに陥れて以来、とことんツイテナイことばかり。いまではすっかり町の笑いもので、父親からも半ば諦められている。そんなある日、一人で夜空を眺めていたチキン・リトルの目の前に、またしても空のカケラが落っこちてきて、というのがストーリーだ。
あるはずのない、あってはならない出来事が簡単に現実の世界で起きる。なんともディズニー映画らしいアイロニカルな現代描写ではないか。遺伝医学の世界でも、あってはならない真実が、この数年、次々と明らかにされている。
それらは、ヒトゲノムの大規模シーケンシングの完了という遺伝子解析法の飛躍的な進歩の裏で、本来の目的であるはずの遺伝子治療の研究に限界が見え始めているということ。そして、一方では、遺伝子情報の取り扱いに関する問題について、十分な議論がなされないままに研究成果のビジネス化が進んでいるということである。そして、新たな研究成果はさらなる「金のなる木」として、倫理的な議論なく、ビジネスに転嫁されようとしているのである。
遺伝情報をどう取り扱うかは、欧米では、一人ひとりのプライバシーや人権にかかわる問題とされ、真剣に議論され、慎重な対応が求められている。2005年には、チンパンジーのゲノム(全遺伝情報)解読や、ヒト遺伝子の個性を探る大規模共同研究の成果などにみられるように、ヒトの進化に係わる重要な遺伝子上の発見がなされた。しかし、その裏に隠された「あってはならない真実」に、遺伝診療に携わる専門家は思わず息をのんだのである。
この連載では、遺伝診療の最前線の実像に、少しでも多くの人が目を向け、議論の焦点としてくれることを願って、遺伝子情報の解明にまつわる現実について語ろうと思う。
「<連載2> 立ちふさがるダブル・スタンダードの壁」に続く >>
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