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医療法人博寿会 理事長 嶋田 丞 |
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次の二つの表を見比べて欲しい。(表1-(a)と表1-(b)では介護保険と医療保険が上下逆であることに注意)
表1-(a)は厚労省発表の「療養病床の将来像について」で使われた説明資料である。表1-(b)は医療経済研究指摘機構の「医師における医療提供体制に関する調査」の中の表である。
似ているようであり違うようでもあることに気づかれるであろう。数字は全く同じであるが、並べ方が違う。表1-(a)の医療保険では16.9/14.3/37.8/29.5の順で並んでいるが、表1-(b)では16.9/37.8/14.3/29.5の順で並んでいる。37.8と14.3が逆になっている。介護保険も同じ操作である。
次に数字の意味が次のように微妙に変えられている。
表1-(a)の37.8の意味: |
容態急変の可能性は低く福祉施設や在宅によって対応できる。 |
表1-(b)の37.8の意味: |
一定の医学的管理を要するが、容態急変の可能性は低い。 |
つまり一定の医学的管理を要するということが、福祉施設や在宅によって対応できるという言い回しに改ざんされたのである。
これがどのように意図的に悪用されたかというと並べ替えにより右側に寄せられた37.8%と29.5%を合わせて「67.3%の人が医学的な管理の必要もないのに、病院に入院している」との結論に厚労省が誘導したのである。改ざんの例はまだある。
表2-(a)の性格は表1-(a)と同じであるが、表2-(b)は中医協の「慢性期医療実態調査」にあるもともとの表である。
医療の48.8%の数字の意味は表2-(b)では「医療的な状態は安定しており医師の指示の見直しはほとんど必要としない」となっているが、表2-(a)では「ほとんど必要なし」となっている。
つまり、表2-(b)では指示の見直しがほとんど必要ないということなのに、表2-(a)ではあたかも「医療がほとんど必要ない」かのごとく違う意味に言い換えられている。
医師の指示の見直しは長期療養患者には、そう頻回にされるものではない。指示見直しの必要性が医療の必要性に転嫁されるのは筋違いである。
平成17年12月に厚労省の医療構造改革推進本部が「療養病床の将来像について」を発表してから、その後の社会保障審議会や中医協、国会などでの説明資料としてこの「二枚の表」が大きな役割を果たした。この表に対し医療関係者は検証して反論するまでに至らなかった。
またその他の委員や議員も提出された資料に疑問を挟むことなく、これで懸案の社会的入院の整理が出来ると考え了承した。何故そうなったのだろうか。この資料が中医協の「慢性期入院医療実態調査(平成17年11月)」、医療経済研究機構の「療養病床における医療提供体制に関する調査(平成16年3月)」の調査結果に基づく、客観性のあるものと説明されたからである。(実際はそうではなかった。)
その1ヶ月後、平成18年1月には「療養病床の将来像について」は「療養病床の再編」と名称が変わり、あれよあれよという間に4月の診療報酬改定では入院基本料の引き下げが行われ、6月14日には法律として与党の賛成で成立し、療養病床の削減が決定づけられた。
状態像から見て、表1-(b)の上位3区分つまり「医療依存度は低いが、容態の急変が起きやすい」までの約70%は療養病床として残すのが当然である。これは療養病床38万床のうち24.5万床にあたるが、今後の高齢者人口の増加を考慮すれば妥当な線であろう。
療養病床の再編については、幸い附帯決議が付けられており、これを活用することで、療養が必要な高齢者の行き場の無い場面を見ないですむように、行政も医師会も含めて皆で努力することが必要と思う。行政の方々には、取るべき政策の選択に誤りが出ないよう、データの使い方等については公正であってもらうことを希望する。
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